弁護士活動日誌

Nちゃんのサンタさんへのお願い

 Nちゃんのお父さんが亡くなったのは、今から、約4年前のことである。

 Nちゃんが、幼稚園に通う前のことだった。

 Nちゃんのことが大好きで子煩悩なお父さんは、亡くなった時、まだ、30歳前半だった。これから今まで以上にバリバリと仕事をするであろう、前途有望な金融マンだった。

 学生時代には海外でアルバイトをしながら旅行をしたり、金融マンとして仕事を始めてからも会社の制度を用いて海外留学を経験したり、きっと、Nちゃんが大きくなったら、世界へ目をむけることの大切さ、面白さを大いに語ってくれたと思う。

 Nちゃんのお父さんが入った会社は、入社後数年して、同じ業界の別会社と合併した。Nちゃんのお父さんが、海外留学から戻ってきて配属された部署へいくと、会社は様変わりをしていた。それでも、有能なNちゃんのお父さんは、留学から戻るとすぐ、即戦力として仕事を任された。

 ただでさえ、現場の感覚が戻らないなかで、しかも、会社の合併によって事務手続きをはじめ、仕事の仕方は全く変わっていた。Nちゃんのお父さんは、家に持ち帰って深夜まで仕事したり、時には徹夜をするなどして、必死になって、会社の期待する仕事をこなそうと努力した。それでも、仕事はやってもやっても次から次へとやってくる。締め切りに追われる毎日、過重な労働がNちゃんのお父さんの心身を蝕でいった。

 珍しく雪が降って、Nちゃんはお父さんと一緒に雪だるまを作って、家の近くで遊んだ。それからしばらくしたある日、Nちゃんのお父さんは天国にいってしまった。

自死だった。

 Nちゃんのお母さんは、お父さんが死んだのは仕事が原因だということで、約2年後、労災申請をした。労災申請にあたっては、沢山のNちゃんのお父さんの職場の同僚が仕事の中身や、仕事の大変さについて担当した弁護団に説明をしてくれた。

 平成16年7月、Nちゃんのお父さんが亡くなったのは仕事が原因でうつ病になったことが原因だとして労災が認定された。

 幼稚園の時のクリスマス、Nちゃんは、サンタさんに「お父さんを帰してください」と頼んだ。Nちゃんは今小学校に通っているが、今でも覚えているだろうか。

 難しいといわれる過労自殺の労災認定がなされたことで、弁護団の一員として安堵する一方で、Nちゃんのサンタさんへのお願いを考えると、今でも、胸がつまる。  Nちゃんが大きくなるころには、過労死・過労自殺が亡くなるために、自分にできることを一つ一つしていきたいと思っている。

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