弁護士活動日誌

特別縁故者への分与について

  • 依頼者のKさんが「亡夫の姉(Aさん)が亡くなったが、A家の祭祀を承継する者はいないし、相続人も誰もいない。私はAの義妹としてAの身のまわりの世話や看病をしてきた。私はAと同じ氏だし、Aの先祖も含めて、祭祀を継いで、Aと一緒に住んでいた家(土地付き)もほしい、何とかならないか」と相談に来た。
    Kに聞いてみると、Aの遺言状はなく、また、戸籍謄本を取り寄せて調査したが、確かに相続人はいない。相続人がいない場合、遺産はすべて国庫に帰属してしまう(民法959条)。
  • そこで、2つの手続きをとることになった。
    1. Kは亡夫がAと姉弟であり、A家の祭祀の承継を望んでいたことから、民法897条の祭祀の承継者が明らかでないときは、家庭裁判所がこれを定めるという規定に則って、祭祀承継の申立てをする。
    2. 1.が認められたら、相続人の不存在を理由に相続財産管理人を選任してもらい(民法952条)、その後、相続人の権利を主張する者がないとき、家庭裁判所は被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、その他被相続人と特別の縁故があった者に対し、相続財産の全部又は一部を与えることができるという、いわゆる「特別縁故者への分与」(民法958条の3)の規定のもとづいて、特別縁故者への相続財産分与の申立てをする。
  • そこで、まず前記1.の手続きをとった。というのは、1.が審判で認められれば、KがAの特別縁故者となるために、より有利になると考えたのである。
    Kのほか、もう1人、相続人ではないが、Aの親戚の人Bがおり、BはA個人の位牌はほしいが、祭祀までは承継を望まないということで、家庭裁判所はKをA家の祭祀承継人と定める審判を下した。KがA家の祭祀承継人になったことを踏まえて、KがAと一緒に生活をしてきたこと(生計を同じくしてきた者)、Aを療養看護してきたこと、祭祀承継者であること、そのためには、Aが今も住み、祭祀としての仏壇なども安置されている土地付きの家と、一定の金員を特別縁故者として分与されたい旨の申立てをした。
    審判手続きのなかで、KがAから生前に困ったときはこれを換金しなさいといわれてもらった外国証券を、実際に売却して生活してきたことについて、外国証券のAからKへの贈与があったとは認定できないとし、その点から、前記のうちの金員の分与は認められなかったが、Kが現実に住んでいる土地付き建物は、特別縁故者として分与を受けることができたのである。
    ちなみに、もう1人の特別縁故者であるBもAの所有していた不動産と一定の金員の分与を受けた。
    なお、特別縁故者と認められても、必ず全部の遺産が分与されるものではないことは、前掲した民法958条の3の規定上、やむを得ないところである。

-以上-

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