弁護士活動日誌

憲法9条を蔑ろにすることは許せない

1 不全感のあった裁判官時代

裁判官時代、市民の司法参加をめぐる集会に参加しては、「現職裁判官」として発言したことがある。そこで繰り広げられる議論が白熱化し、勢い、職業裁判官による裁判は「有罪心証」のもとに行われるもので到底許すことができない、と批判一辺倒に傾斜した際に、思わず手を挙げ、「必ずしもそうではない。無罪発見に心血を注ぐ裁判官もいる。」と述べたのである。その発言内容に対する賛否はともあれ、皆さん、現職裁判官の「勇気ある」発言に耳を傾けてくれた。そうした集会のほか、各地の憲法9条の会や護憲団体の催す集まりにも、フットワーク軽く、しばしば出かけた。ただし、あくまで一市民として参加したもので、「裁判官として」発言することはなかった。どの団体が主催するにせよ、「政治色」があることは否定できず、余計な誤解を招いてはと用心したのであった、しかし、端的にいえば「お忍び」の参加であって、いつも不全感がつきまとった。そして、多くの裁判官と同様、九条に関わる裁判を担当することもなく、裁判官生活を終えることになった。

2 弁護士になっての集会参加

裁判官を退官すれば集会参加も発言も自由だ。1年3か月ほど弁護士登録を猶予していたが、時間があるのを幸い、各地の憲法集会に出かけた。元裁判官として発言させていただいたこともある。弁護士登録をしてからも、「憲法の集まり」には頻繁に顔を出し、憲法記念日に開かれる集会では、講師の熱気を帯びた語りや市民の方々の活動報告に毎回勇気をいただいた。しかし、「憲法の集まり」がいつも活況を呈しているわけではない。それゆえ地道な研究会こそ大事だと思って、その講師役を務めたこともある。そうした行状がお目にとまったのか、大阪弁護士会九条の会から「事務局長をやってほしい」との要請を受けた。裁判官時代の鬱屈を晴らすチャンスと思い二つ返事で応諾した(決して会の「窮状」を見かねて引き受けたわけではない。)。折から、集団的自衛権を解釈改憲で認めようとする政府与党の動きが加速化し、あっという間に安全保障関連法案が上程された。今こそ、小異を捨てて「平和憲法擁護」の一点で団結して、戦争に直結する法案の成立を阻むしかないと思っていた矢先、今度は、「おおさか1万人大集会」の呼びかけ人なってほしいとの依頼があった。少し迷ったが、9条を蔑ろにすることは絶対許されないとの思いから、49名の末席に連なることを承諾した。

3 憲法遵守の闘いは終わらない

残念なことに、1万人の大集会に先立つ7月16日、自民、公明の与党は安全保障法案を衆院通過させた。国民の理解が不充分であることを承知しながら、数だけを頼みにした強行採決は、立憲民主主義を踏みにじる暴挙であって、憲法9条を愚弄するにも程があろう。国会が熟議を尽くさないのであれば、憲法遵守の声は街頭や広場において発するほかはない。それは、もはや一法律家としての活動ではなく、一市民としての活動に回帰することになるが、この闘いは、おそらく終生続く闘いになるであろう。

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