弁護士 和田 香の部屋

2018年08月

抑圧移譲の原理

2018/08/22 15:13:12

 最近、ロシア語通訳で作家の故・米原万里さんの著書を〝ばっかり読み〟しています。 今、読んでいるのは、『打ちのめされるようなすごい本』(文藝春秋)。読書家の米原さんが読んだ本の書評や感想が集められています。これを読むと、あたかも自分でたくさんの本を読んだ気持ちになれて、とってもお得です。

 さて、そこで紹介された『〈自己責任〉とは何か』(桜井哲夫著・講談社現代新書)。日本社会の強者に優しく弱者に残酷な体質を「抑圧移譲の原理」として説明しているというくだり。米原さんの記述を引用します。 『個人の内面的倫理が確立されておらず、個人の行動の基準が権力との一体化のなかにあるため、常に上級者の顔色をうかがい、自分の行為が上から正当化されるのを求める。上から正当化されれば、それは自分の責任ではない。しかし、常に上からの圧迫を感じているから、下へ威張り散らすことで発散しようとする。上からの圧迫は、常に下へ下へと送られ、最も弱い存在に責任転嫁されていく。これが「抑圧移譲の原理」。この場合、法律は、上意下達の権力秩序を維持するための手段に過ぎないので、法律を守ることが強要されるのは、もっぱら下の者で、為政者にはルーズになる』。

 「上」が希望することを自らの行動規範としている「中」。「中」は「上」の望むように行動しただけなので問題が起きても責任はとらない。「上」といっても、最終的に誰がトップで責任を取るのか明確ではない。ツケは全て「下」に回る。法律の遵守を求められ、違反を非難されるのは「下」だけ。新聞を見ても、周囲を見渡しても、なるほどと頷くことしきり。抑圧移譲の原理の一旦を担わないよう、努力したいものです。

ページの先頭へ戻る