弁護士 森野 俊彦の部屋

2019年08月

再審開始が取消されるとは

2019/08/01 00:00:41

 最近読み終えた浜田寿美男氏の「虚偽自白を読み解く」(岩波新書)の感想を当欄に書こうと思っていた矢先、原稿締切り間際になって衝撃的な最高裁決定が出た。地裁、高裁と再審開始を認めた大崎事件について、各決定を取消して再審開始を認めない決定(6月25日付け)を下したのである。新聞報道のみの情報なので、軽々にはいえないが、再審開始決定の決め手となった法医学鑑定について、「遺体を見ておらず解剖に基づく別の鑑定書の情報や写真などを元に示された見解で、死因を決定的には証明できない」と判断した。これを一般化すると、有罪認定に供した遺体などに関する鑑定書を見直す機会がほとんどなくなるのであって疑問ではないだろうか。また共犯者らの自白や証言を強固だとした点も、慎重に扱うべき共犯者らの供述に寄りかかる危険を顧みないものであり、全体として、再審請求審にも「疑わしきは被告人の利益に」の原則を適用すべきだとした白鳥決定に悖るものとなっている。
 裁判官退官後、自由な境遇になったのを契機に、刑事裁判に興味と関心を抱いて、再審開始請求事件も注視しているが、本決定が今後の再審裁判に「悪しき前例」とならないか、請求人代理人ならずとも、暗然とした気持ちだ。

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