弁護士 上出恭子の部屋

成年後見を受けた人の選挙権喪失は憲法違反・平成25年3月14日東京地裁判決

2013/03/10 11:03:47

 成年後見人が付くと選挙権を失う公選法の規定は憲法に違反するとして、茨城県在住の成年被後見人(後見人がつけられた人)の方が国を相手に選挙権があることの確認を求めた訴訟の判決が3月14日、東京地裁でありました。原告の方は、ダウン症で知的障害があり、2007年2月、家族が後見人に選任されたことにより、選挙権を失いました。

 判決理由で定塚裁判長は「憲法が国民に保障する選挙権を制限することは原則として許されず、やむを得ない理由がある極めて例外的な場合に限られる」とし、その上で、成年後見人を付けるかどうかで
審査されるのは、財産管理能力の有無であって、選挙権を行使する能力とは異なると指摘、被後見人とされた人がすべて選挙権を行使する能力を欠くわけではないのは明らかと判断しました。
 判決はさらに、選挙権の制限は、障害者が健常者と分け隔てなく生活できるノーマライゼーションを踏まえた同制度の趣旨や選挙権制限を見直す方向にある国際的な潮流に反すると批判し、「立法は、裁量の限界を超えて違憲である」と結論づけました。

 国側は「不正投票の誘導が行われる恐れがある」と主張しましたが「不正投票が相当な頻度で行われると推認するに足る証拠はない」と退けました。

 特に、判決の本文で「そもそも後見開始の審判を受け、成年被後見人となった者も、我が国の『国民』である。憲法が、我が国民の選挙権を、国民主権の原理に基づく議会制民主主義の根幹をなすものとして位置づけているのは、自らが自らを統治するという民主主義の根本理念を実現するために、様々な境遇にある国民が、この国がどんなふうになったらいいか、どんな施策がされたら自分たちは幸せかなどについての意見を、自らを統治する主権者として、選挙を通じて国政に届けることこそが議会制民主主義の根幹であるからにほかならない。我が国の国民には、望まざるにも関わらず障害を持って生まれた者、不慮の事故や病によって障害を持つに至った者、老化という自然的な生理現象に伴って判断能力が低下する者など様々なハンディキャップを負う者が多数存在する。そのような国民から選挙権を奪うのは、それをすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙を行うことが事実上不能ないし困難であると認められる『やむを得ない事由』があるという極めて例外的な場合に限られるのである」という判示に、広い意味で、誰もが障害を持つ可能性がある中で、民主主義の根幹に関わる「選挙権」の行使の重要性を強く示したもので、画期的な判決だと思います。

 総務省は「今後の対応は法務省と協議する」とコメントしているようですが、当該判決が控訴されることなく確定し、一日も早い公職選挙法の改正が待たれます。 

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