弁護士 上出恭子の部屋

2004年08月

大きな木

2004/08/01 09:00:00

  自宅から徒歩5分ほどのところに、両親と今年92歳になる祖母が暮らしている。
 実家が商売をしていたことから、私の幼年期は祖母が随分と面倒を見てくれた。元来、元気でしっかりしていた祖母だが、数年前に足を骨折して以来、家の中でもなんとか杖をついて歩いている状態で、外出となれば車椅子が必要である。
 新芽の美しい5月、その祖母を連れて、近くの公園へと散歩に出かけた。初めは実家のすぐそばの公園にちょこっと行って戻ってくるつもりが、天気も良く、祖母も気持ちよさそうにしてくれていたので、少し足を延ばして、地域では「中央公園」と呼ばれている公園まで行った。
 その昔、大きなお屋敷だった跡地が寄付をされて出来た公園は、公園というよりは木が生い茂りちょっとした森のようである。日曜日の午後ということもあってか、子供達で賑わっていた。
 野球をする少年達の邪魔にならぬよう、祖母の車椅子を押しながら公園に入ると、しばらくして、祖母が「おおきな木やな」っと、車椅子から木を見上げながら言った。このところ木の鑑賞が楽しみの一つとなっている私には、とりたてて大きいとは思えなかったものの、「ほんまやね」と相づちを打った。
 その後、公園をゆっくりと一周し、少し大回りをして実家へと戻ったが、帰り道で、ふと、「大きな木」とつぶやいた祖母の脳裏には、何時の時代に、どこで見たどんな木があったのだろうか。大正、昭和、平成という三つの世代を生き抜いた祖母が目にした木々を、自分の中に思い浮かべた。

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