弁護士 蒲田豊彦の部屋

2011年08月

珈琲と煙草

2011/08/25 09:59:09

梅田の地下街の喫茶店「ピッコロ2」でコーヒーを飲んでいる。奥に長く十脚ほどのスツールが一列に並べられた小さな店だ。中年の婦人が入ってきて、一番入口のスツールに腰掛けてコーヒーを注文した。

 彼女は、出されたコーヒーのスプーンを「いらない」といって返した。ブラック通らしい。彼女は煙草を手に隣りの私に「これいいですか」と声をかけた。

 私は「コーヒーには煙草があいますね」と答え、そして、彼女に言った。 「煙草はやめられませんか」

 「私はやめようと思ったことがないの。でも、いつでもやめられるんです。二人の子を産んだときはやめてましたもの」

 「子供が育ってからはまたすってますわ」

 「銘柄は何ですか」 「ピースライト。ほかのものはダメなの」

 「うん、わかる、わかる。僕も昔ピースだった」

 「そう、両切りのピー缶が最高。よく山に行くとき、一缶持って行ったわ」

 「僕は昔、パイプをやっていました。カプスタンだの、スィートダブリンだの」

 「男の人はパイプ、似合うわね。女はダメだけど。パイプ煙草の香りってたまらないわね」

 彼女は使い込まれたブックカバーの文庫本をコーヒーカップの横に置いている。

 「コーヒーと煙草と文庫本はセットですね」

彼女は大きく頷いた。

 「そう。ハンディーな文庫本が絶対いいわね」

 「東野圭吾ですか」 「いや、村上春樹です」

 本のタイトルは訊かなかったが、本の厚さから「国境の南・太陽の西」かもしれない。私は本のタイトルを訊かないまま彼女に「またね」と言って店を出た。

 

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