事務所ニュース「いずみ」
HOME > 事務所ニュースいずみ > 法律相談Q&A > 採用内定取消とその制限

法律相談Q&A

採用内定取消とその制限

私は来年の春に大学を卒業する予定で、今年の5月には就職活動先の企業から内定通知をいただいていましたが、突然、採用担当の方から「不況で経営が悪化したので内定を取消します。」と通告されました。どうすればよいでしょうか。

 このように突然内定取消しと言われても、再度就職活動したとして来年の春にはとても間に合わず新卒で就職できなくなります。今の雇用情勢からすればこれは大きなデメリットになることも事実です。
 まずは、「採用内定」という段階は法律的にはどういった地位にあるのか見てみましょう。採用内定の通知があった時点で、既に労働契約が成立しているといえます。ただ、通常の労働契約と異なるところは、この労働契約は、就労開始予定日までに内定取消事由が生じた場合には、企業は解約できるという契約であるという点です。では、ここでいう「内定取消事由」とはどういった事を指すのでしょうか。
 内定取消事由は、通常は採用内定通知書や誓約書に記載されていることが多いです。ただ、これらに記載がなくても個別に合意した内容であれば、内定取消事由にはなります。
 ですが、内定通知書や誓約書などに内定取消事由が記載されていたり、個別に合意しているからといって、全て適法な内定取消事由となるわけではありません。この点、大日本印刷事件の最高裁判決の判断基準が参考になります。
 同判決によると、企業による採用内定取消は、既に成立した労働契約の一方的解約(解雇)であり、採用内定取消が適法と認められるには、
(1)「採用内定当時知ることができず、また知ることが期待できない」事実が後に判明したこと
(2) 採用内定を取り消すことが「客観的に合理的と認められ、社会通念上相当として是認できる」場合
 に限られるとしました。
 このように、内定取消事由が認められるのは極めて限定された場合と考えられます。
 例えば、不況を理由とする内定取消についても、企業が経営・人事計画に基づいて、一旦は積極的に人材募集をかけたわけですから、短期間で本当に採用できなくなるほど経営が悪化したのかが問題となります。
 実際にこのような採用内定取消にあわれた場合、交渉や労働審判など様々な手段がありますから、具体的な判断については一度弁護士に相談されてみると良いでしょう。

弁護士 立野嘉英

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第27号(2010/1/1発行)より転載

ページの先頭へ戻る