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法律相談Q&A

脅迫と取消による無効

私はお金に困った内縁の夫から包丁を突きつけられて数通の書類に署名させられました。夫はこれらの署名入りの書類と私から勝手に取り上げていた実印と印鑑登録カードを使って私の印鑑証明書をあげ、金融業者から1,000万円を借り入れ、その際、私所有の土地・建物に勝手に抵当権設定登記をし、公正証書で私を借金の連帯保証人にしてしまいました。
 夫は借金を返さず、私は金融業者から保証人として責任をとれとか、土地・建物を競売すると迫られ困っています。私は金融業者に何もいえないのでしょうか

 結論からいえばあなたは連帯保証人の責任も抵当権設定登記の負担も内縁の夫の強迫に よるものとして金融業者に対し意思表示の取消による無効をもって対抗できます。したがって、金融業者の要求には応じる必要はありません。
 あなたが署名した書類は一つは登記に関する委任状であり、一つは公正証書作成用の委任状だと思います。
 内縁の夫はこれらの書類とあなたの印鑑証明書と実印を使って金融業者にあなたの署名、押印であるとしてあなたの土地・建物に抵当権を設定するとともにあなたが連帯保証人になるといっているとして公正証書で自分を借主とし、あなたを連帯保証人として金融業者から借金をしたのだと思います。
 しかし、あなたは強迫によって右に述べたような書類に署名したのですから瑕疵ある意思表示をしたものとしてそれを取消すことができるのです。
 あなたのケースの場合、一つは金融業者自身が強迫した場合でないのに当該金融業者に対する意思表示を取消せるかという点と、もう一つは金融業者は第三者として強迫の事実を知らない(善意の第三者)のですから取消をもって対抗できないのではないかという点とが問題になります。
 詐欺による意思表示の場合、右の二つの点について、金融業者が内縁の夫の詐欺を知らないときはあなたは金融業者に対し取消をもって対抗できませんが、強迫の場合は金融業者が内縁の夫の強迫の事実を知っていても知っていなくてもあなたは取消をもって対抗できるのです。詐欺よりも強迫の方が意思表示のゆがめられ方がひどいということでこのようになるのです。
 あなたは弁護士に相談して抵当権の抹消登記手続の訴訟や公正証書による保証債務の不存在を確認する訴訟を提起するなどの対策を講じられることをお勧めします。

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第5号(1997/3/15発行)より転載

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