事務所ニュース「いずみ」

法律相談Q&A

準消費貸借と時効

私は商法上の商人ですが、平成4年10月ごろ、Aさんと一緒に新しく会社を設立して、商売をやろうということになり、私の妻が連帯保証人になり、Aさんから1,000万円を出してもらい、その1,000万円で会社の設立のための準備をしましたが、都合で会社の設立を断念しました。私はAさんから平成5 年8月になって1,000万円を返してほしいと言われ、平成5年9月30日までに返すという内容の借用書を書かされました。私は支払わないまま今日に至りましたが、Aさんから平成12年1月、支払いの請求を受けました。私は借用書を書きましたが、共同経営のための1,000万円であったこともあり、返済したくありません。何とかならないでしょうか。

 あなたも奥さんもAさんに返済しなくてもよいと思います。
 あなたがAさんから出してもらった1,000万円は共同で経営する会社の設立のためのものであり、果たしてあなたの借金になるかどうかという問題がありますが、仮にあなたの借金になるとしても、会社の設立のための準備行為としての1,000万円ですから、その返還義務は5年の商事時効によって消滅します(判例)。奥さんの保証債務も主たる債務が時効で消滅すれば当然に消滅します。
 問題はあなたがのちに借用書を作成していることです。これは準消費貸借契約と言って、旧債務に代わって新しく消費貸借を締結したことになるのです。この場合、奥さんが準消費貸借契約の当事者として借用書に署名押印していませんが、判例は当然に奥さんの保証人としての責任は準消費貸借契約にも引き継がれると言っています。準消費貸借契約によって、旧債務の消滅時効は中断しますが、新しく準消費貸借契約つまり借用証を作成したときからは旧債務と新債務の内容は同じであるのかどうかが問題となります。同じであれば旧債権が商事債権でしたので新債権も商事債権となると考えれば、借用証を作成してから5年以上を経過していますので、時効に罹って右債務は消滅していることになります。
 判例は準消費貸借契約の締結が商行為になるかどうかで決するとしています。あなたが商人として準消費貸借契約を締結したのであれば、5年の商事時効で債務は消滅していると考えられます。そうではなく、あなたが個人として準消費貸借契約をしたのであれば10年の民事消滅時効の適用を受けますので、時効による債務の消滅は主張できなくなります。また、準消費貸借契約がなされても、新旧の債務は同一という立場からは、あなたは5年の商事時効の主張ができることになります。

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第11号(2000/9/10発行)より転載

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