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日弁連が初めて「安全な住宅に居住する権利」を宣言 ―第48回人権擁護大会とシンポジウムに取り組んで―

1 日弁連は毎年1回、その時々の重要な人権テーマを取り上げて決議・宣言を行う「人権擁護大会」と、そのテーマに関するシンポジウムを行っているが、阪神大震災10年目の節目の2005年の大会で、私たちの取り組んでいる欠陥住宅問題が3つのテーマの一つとして取り上げられた。
 取り上げられることが決まってから約一年間、私たち「シンポジウム第3分科会実行委員会」は、全力でその成功のために取り組んできた。私が事務局長をしている欠陥住宅全国ネットも、全面的に協力してきた。

2 11月9日に鳥取県立県民文化会館小ホールで開かれたシンポジウム「日本の住宅の安全性は確保されたか――阪神・淡路大震災10年後の検証――」は、500人を超える参加者であふれた。
 
 「第一部 地震と欠陥住宅被害」では、阪神大震災のすさまじい被害と、欠陥住宅の深刻な実情について、映像を中心に紹介された。また、鳥取大学の「劇団あしあと」の学生さんによる犠牲者の遺族の悲痛な言葉の朗読に、会場は静まりかえった。
 「第二部 阪神・淡路大震災10年後の検証」では、私たち実行委員会の基調報告と、立命館大学の松本克美教授による「欠陥住宅訴訟の到達点と課題――住宅の安全と法的責任――」と題する講演が行われた。
 「第三部 『安全な住宅に居住する権利』の実現をめざして」では、まず最初に、「劇団あしあと」の皆さんによる、購入した欠陥住宅が地震で倒壊して、家族を失い、莫大なローンだけが残った男性を主人公とする演劇「夢の代償」が上演された。この脚本の原作は私が書いたものであるが、劇団の皆さんの熱演により、あまりのリアルさに、思わず涙ぐむ参加者もいた。

 続いて、神戸、仙台、広島、京都の各地で行われたプレシンポジウムの報告の後、国土交通省の住宅局建築指導課長、日本木造住宅産業協会の技術開発部長、建築士、学者、弁護士の5人がパネリスト、私がコーディネーターとなって、2時間半に及ぶパネルディスカッション「住宅の安全性を確保するために」を行った。会場からの発言や質問も交えながら、それぞれ立場も考え方も違う方々にかみ合った議論をしていただくのは大変であったが、とてもよかったとの評価をいただくことができた。
 そして、午後6時10分、シンポジウムは万雷の拍手のうちに終了した。
 

3 その夜、実行委員会メンバーとパネリストの方々、全国ネットからの参加者の合同で、解禁されたばかりの松葉ガニを楽しみながら、打ち上げ慰労会を行った。参加者一人ひとりの顔が、シンポジウムを成功させた喜びに輝いていた。私自身、これほど達成感と充実感、解放感をかみしめながら美酒に酔ったことは初めてであった。

4 翌11月10日に行われた人権擁護大会では、予定どおり私たちの準備した「安全な住宅に居住する権利を確保するための法整備・施策を求める決議」が満場一致で採択された。住宅問題が人権擁護大会で取り上げられたのは、48回目の今回が初めてであり、その意義は限りなく大きい。

5 ところが、その余韻もさめやらぬ11月17日、マンションの構造計算を行う建築士がデータを偽造し、それを民間確認検査会社がずさんな検査によって見落とし、耐震基準をはるかに下回り震度5程度の地震で倒壊するマンションが多数建築されていることが発覚して、大きな社会問題となっている。まさに前記のシンポジウムや人権大会で指摘した実態があることが、はからずも明らかになった。
 私たち欠陥住宅全国ネットは、すぐに対策本部を設置し、「被害者相談会」や「構造計算偽造・ずさん検査110番」などの取り組みを開始した。この問題を契機に、住宅の建築システムを改善し、「安全な住宅に居住する権利」を実現していきたいと考えている。

弁護士 岩城 穣

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第19号(2006/1/1発行)より転載

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