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風害判決と人格権

1 風害によって被害を蒙った2家族(合計6人)が(弁護団は蒲田豊彦、岩城穣、山名邦彦、上出恭子の各弁護士)、加害マンション(高さ約57メートルの建物2棟、高さ約35メートルの建物1棟)を建築した丸紅や竹中工務店らを訴えていた損害賠償請求事件で、大阪高等裁判所(武田多喜子、山下満、青沼潔の各裁判官)は、平成15年10月28日、丸紅らの加害企業に対し、慰藉料600万円(一人100万円)、風害による建物や土地の価格下落分の財産的損害として金1110万円(2戸分)など、合計約1490万円(これとは別に第一審判決で認容された420万円は、すでに受領ずみである)を支払うよう命じる判決を下した。
 この判決は、第一審判決とともに、風害の発生(風環境の悪化)を理由に損害賠償を認めた事案としては、日本で最初のものであり、しかも上記の高裁の判決は、風害による財産的損害を認めたものとして画期的なものである。
 今まで裁判所は本件と同種の日照権訴訟や眺望権訴訟では、慰藉料は認めるが、日照阻害や眺望を侵害したことによる家屋や土地の価格の下落による財産的損害については慰藉料のなかに財産的損害も考慮されているなどという理由で、認めて来なかった。
 今回の高裁判決は、この種の事件について、財産的損害を認める先例となりうるものであり、意義のある判決であると思う。 新聞各紙は、このニュースを一面で報じたものも含め、大きく報道した。

2 判決は慰藉料や財産的損害を認める理由として、次のように述べている。
 「個人がその居住する居宅の内外において良好な風環境等の利益を享受することは、安全かつ平穏な日常生活を送るために不可欠なものであり、法的に保護される人格的利益として十分に尊重されなければならない」、「住民らの上記の人格的利益が侵害された場合、それは違法な権利侵害として(加害者は)不法行為責任を負うと解すべきである」。そして、判決は「住民らは本件マンションによって生じた風害により、一般的社会生活上受忍すべき限度を越える程度にまで、良好な風環境を享受する人格的利益を侵害されたものと認められる」としている。

3 上記の判決のいう人格的利益ないし人格権は、憲法13条に由来するものである。
 憲法13条は「すべての国民は個人として尊重される。生命、自由及び幸福の追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」と定める。
 この規定は、包括的人権規定と言われ、個別的人権規定ではまかなえない人権を新しく導き出す機能を有するものと解され、平和的生存権とか、人格権とか、環境権などを導き出す根拠規定とされている。
 本判決は、憲法上の権利とは明言していないが、人格的利益と表現して、「風環境権」の保護の必要性を高らかに宣言したものである。

4 思うに、都心部を中心とする都市開発は、そこに住む人たちの住環境を無視ないしは犠牲にして進められてはならない。
 いわゆる「街づくり」は人間のためのそれでなければならず、そこには自ずと調和が必要である。
 

風害判決と人格権

高裁勝訴判決を記念して
(左から岩城,蒲田,上出の各弁護士)

 住民の生活や住環境を無視して、建築基準法を守っているからとか、建築確認がおりたからという理由だけで、高層建物の建築が無条件に許されるものではない。新しい都市開発(都市の高層化)については、周辺の住民の日照権を侵害していないか、眺望権の侵害や風害による被害の発生はないか、緑地帯が設けられているか、一定の公開空地があるかなど、住民の住環境などとの調和のなかで進められなければならない。
 今回の判決は、住民の住環境を無視して「自分の所有地には自由に建物を建てるのは当然である」との加害者(デベロッパー)の横暴を、違法であると断罪したものであり、この面でも画期的な判決である。
 この判決が、同種の悩みを抱えている住民のみなさんに役立ち、都市開発の在り方の一つを示すものとなれば幸いである。

 

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第16号(2004/1/1発行)より転載

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