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在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない

1 「一人で下校中、知らない高校生くらいの男の人約八人に取り囲まれ、数十メートル歩いている間ずっと『死ね』『朝鮮帰れ』などと言われた。」「一人で電車に乗っていたら、中年の女性にずっと睨まれ、降りる時に体当たりされた。」「チョゴリを着て歩いていたら、自転車に乗った中年の男性が唾をはきかけて去っていった。」 これらは、朝鮮学校に通う生徒さんから聞かせてもらった、今までに受けた嫌がらせの内容である。いずれも中学高校の女生徒・一人で登下校中の体験ということだったが、私自身が一人でいるときにこんな目に遭ったらどれだけ怖いだろうと思う。

2 (1) 平成14年12月末に「在日コリアンの子どもたちに対する嫌がらせを許さない大阪弁護士の会」(以下「会」)が結成され(現在の会員数約20人)、私もメンバーの一員として活動している。会結成のきっかけは、平成14年9月17日以降、拉致報道の影響等から、朝鮮学校に通う子どもたちへの嫌がらせが急増しているという事実を知ったことだった。私と同期の新人弁護士(愛知・東京が中心)が嫌がらせについての実態調査を始めたというのを聞いて、大阪でも活動を始めることになったのである。
 会結成当時、会員のモチベーションは様々で、私自身は単純に「子どもたちに対する理不尽な嫌がらせは許せない。なくさないと。」という思いから参加した。と言っても、実際どのような嫌がらせがなされているのか把握できておらず、そのままでは会の活動の方向性も定まらないということで、朝鮮学校の生徒からの聞き取り調査に取り組むことが決まり、会の活動が始まった。

(2) その聞き取り調査の中であがってきたのが、冒頭で述べた嫌がらせである。言うまでもないが、上記はそれらの中のほんの一部である。言葉によるもの(「死ね」「朝鮮帰れ」等)が多く、男子生徒よりも女子生徒に被害が多い。意外だったのが、同世代の中高生からの嫌がらせも多いという事実であった(「ワイドショーをよく見る中年女性が嫌がらせの主体では」と思っていたため)。
 また、生徒さんと話している中で、「そう言えばこんなこともあったけど、これも嫌がらせにあたるのかもしれない。」と、それまで先生等に報告したことはなかったという話が数多く出てきたのも印象的であった。「当たり前すぎるから報告していない」と話していたが、知らない人から睨まれたり体当たりされたりすることが「当たり前」になってしまっているという事実を前に、何も言えなくなってしまった。

3 「拉致が悪いというのは事実。でも、どうして私たちがこんな目に遭わないといけないの、と思う」。「TVを見ていると、自分の国のことが嫌いになってしまう。いいところもある国なのに、悲しい」。見知らぬ人から理不尽な嫌がらせを受けることが「当たり前」になってしまう生活の中で、在日コリアンの子どもたちは、複雑な思いを抱えながら、日々過ごしている。しかも、それが、これから長年に亘り一緒に社会を作っていく存在である同世代からの嫌がらせであるとなると、絶望感が強くなるのではないだろうか。 調査活動を進めれば進めるほど「とにかく許せない」という気持ちは強くなるのだが、一方で「じゃあ私に何ができるのか」を考えると難しく、無力な自分を実感させられてばかりである。現在、会では大阪府内の朝鮮学校全校を対象にしたアンケートを行っているが、私自身まず実態を知って、今後何らかの形で知らせていくこと等を通じて、少しでも嫌がらせをなくし、在日コリアンの子どもたちが絶望感を抱えることなく過ごしていけるような社会にしていけたらと思っている。

弁護士 佐藤真奈美

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第15号(2003/7/20発行)より転載

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