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米軍支援に国民を動員

1 ついに登場した法案
 4月、政府は「有事法制関連三法案」(武力攻撃事態法案など)を閣議決定し、国会で審議が始まっています。これまで自衛隊の海外派遣について「周辺事態法」「PKO協力法」「テロ特措法」が制定され、実際に派遣されてきましたが、今回の有事法制関連法案は、これらとはまったく違い、政府が「有事」=「武力攻撃事態」だと認めれば、日本全体を「戦時体制」にして、地方自治体や民間企業・国民を戦争に動員できる法律です。

2 法案のポイント(「武攻」は武力攻撃事態法案、「自衛」は自衛隊法改正法案)
この法案は、(1)政府が「武力攻撃事態」だと認定すれば、(2)国は自衛隊の作戦や警報・避難・救助・復旧、生活関連物資の価格統制や配給などの「対処措置」をとり(武攻2条)、(3)地方自治体や(武攻5条)(4)「指定公共機関」(武攻6条)は国とともに「対処措置」の実施責任を負い、(5)国民も「必要な協力をするよう努めなければならない」(武攻8条)。(4)政府は自衛隊に「陣地構築命令」を出すことができ(自衛77条の2)、(5)自衛隊の作戦地域外の医療・土木建築工事・輸送に従事する業者及びその従業員に対し「業務従事命令」を発することができる(自衛103条2項)、(6)知事や師団長などは、物資の生産、集荷、販売、配給、保管、輸送の業者に対して物資の「保管命令」や「立入検査」ができ(自衛103条)、これに違反すると懲役・罰金を科される、などです。

3 法案の問題点
(1) まず、前提として、「武力攻撃事態」の概念は、(1)武力攻撃があった場合のほか、(2)武力攻撃の「おそれ」や(3)「予測される」場合も含まれるとされており(武攻2条)、極めて広く、しかも、その判断を行うのは「政府」であり、国会の承認は事後承認でよいとされています。
(2) 国が行う「対処措置」は自衛隊の軍事作戦・兵站(ヘイタン)から総力戦に対応した価格統制・配給まで、国民経済・国民生活全般に及びます。
(3) 「対処措置」の実施について、内閣総理大臣は地方自治体の首長に対する「指示権」や「代執行権」が認められます(武攻15条)。
(4) 「指定公共機関」には、医療、電気・ガス、輸送、報道、通信その他の民間企業も広く含まれる可能性が高い。
(5) 国民の協力義務、公共の福祉の名のもとに、国民の戦争反対の集会や報道の自由が制限されます。
(6) 「陣地構築」では、国民の財産が収用され、「業務従事命令」では国民が広く徴用されることになります。
 これらを見れば、法律の専門家でなくても、この法案が、日本国憲法のもとで戦後築いてきた制度や社会を、あいまいな「戦時」の認定のもとに変えてしまうものであることがわかるでしょう。

 4 狙いは、米軍のための戦争動員
 「万が一攻撃されたらどうするのか」「備えあれば憂いなし」といった素朴な意見もあります。しかし、日本は安保条約や「日米防衛協力ガイドライン」、これらに基づく多数の米軍基地によって、アメリカの軍事戦略にしっかりと組み込まれています。そして現に、昨年の同時多発テロの際、ブッシュ大統領は「これは戦争だ」と叫んで、アフガンへの報復攻撃を開始したのです。

 5 いま、日本に求められているのは何か
 私たちは55年前、戦前の無謀な戦争の反省に立って、「日本国民は、‥‥われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し」、「恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意」しました(日本国憲法前文)。
 今、不祥事や汚職だらけの日本政府や外務省は、本当にこの精神に沿った平和のための外交や努力をしているでしょうか。このような政府に、このような法律を与えたら、いったいどうなるのでしょうか。今こそ、草の根からこの「有事法制三法案」に反対の声をあげなければなりません。

弁護士 岩城 穣

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第13号(2002/6/1発行)より転載

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