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オアシス

校長先生の過労自殺

 「いずみ」第10号のオアシス(→こちら)で、岩城弁護士が、1999年9月、過労自殺を労災認定するにあたっての認定基準が、また国家公務員、地方公務員についてもほぼ同様の基準が制定されたことを紹介している。
 このように新たな基準が制定されるなか、1999年3月下旬、当時、小学校の校長先生だったDさんが自ら命を絶った件でD校長の遺族から依頼を受け、同年12月、当職、岩城弁護士、小橋るり弁護士の3名で公務災害申請の代理人として申請を行った。
 過労自殺についての認定基準制定後、おそらく初めての学校長の公務災害申請ということでマスコミでも報道されるなど世論の注目を浴びた。
 注目を集めた理由としては、単に、学校長の過労自殺による公務災害申請が異例であるということだけでなく、学校長の仕事が原因と考えられる自殺が後を絶たないからであろう。2000年3月には、中学校の校長が相次いで、自ら命を絶った。D校長と同様、卒業式直後の出来事である。
 D校長の場合、ある問題で保護者から継続して、激しい抗議、苦情を受け、誠心誠意保護者の申し出を受け入れ話し合いに努めたものの、一向に解決の見込みがなくなり、いわば限界に達して教育委員会に相談に行ったところ、受けたアドバイスは「学校として精一杯誠意を持って対応していること、繰り返し、繰り返し、学校側の願い、思いを保護者に伝えるように」というものであった。事態は好転することなく、さらに深刻化するなか、D校長は抑うつ状態で入院し、その後しばらくして、自ら命を絶った。
 学校の最高責任者ということで学校内では相談する相手がいない。また、本来なら学校長の相談窓口となるべき教育委員会も、多くの学校を抱えており、一つの学校だけにきめ細やかな対応をすることには限界がある。
 D校長と同じような悲劇が続くことをきくにつけ、個別の事案ごとに問題点の現れ方は違うものの、そこには根本的に共通する学校教育の構造的な問題があるものと思えてならない。
 学級崩壊、いじめ、不登校など、様々な問題を抱える学校の全面的な責任を負っている学校長に必要に応じた適切なアドバイスを与える制度を整備しなければ、同じ悲劇が続くだけでなく、学校長が学内では個々の教師の相談窓口となっているため、個々の教師にも支障がでてくるおそれがある。
 D校長の死を無駄にしないよう、何としても公務災害としての認定を獲得するとともに、教育現場の抱える問題点、特に学校長の相談窓口の整備について真摯な努力がなされるよう、問題提起をしていきたいと考えている。

弁護士 上出恭子

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第11号(2000/9/10発行)より転載

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