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欠陥住宅と建築士の社会的責任

一 欠陥住宅問題は、阪神大震災で多数の住宅が倒壊し6400人もの犠牲者を出したことからクローズアップされ、その後日本弁護士連合会や、弁護士・建築士・学者などで作っている「欠陥住宅全国ネット」「関西ネット」などが精力的に取り上げてきたこともあり、近時大きな社会問題として認識されつつある。6月に2回にわたり関西ネットが実施した「欠陥住宅110番」には、合計99件もの相談が殺到した。
 欠陥住宅が大量に発生する社会的、経済的背景はいろいろあるが、制度上の最大の原因は、特に市井の戸建て住宅では建築基準法が定めている建築士による「監理」が十分に機能していないことである。建築基準法では、設計、施工、監理がそれぞれ緊張関係をもって行われることで建築現場で「自治」が行われることを期待しており、そのため行政の「中間検査」は原則として行わず、「完了検査」だけを行うことになっている。
 にもかかわらず、一般の戸建て住宅では、施工業者が設計・監理も含めた「一括請負」を行い、かつ、当該施工業者と一体ないし従属関係にある建築士が建築確認申請書に「監理者」として届出を行いながら、実際は全く監理をせず、違法建築・手抜き工事を黙認している例が圧倒的に多い。関西ネットへの欠陥住宅の相談も、その大部分がそのような事案である。そして、中間検査はほとんど行われず、完了検査さえわずか3割程度しか行われていないのである。
 6月上旬に成立した建築基準法の改正では、行政による中間検査が一部義務化されたが、戸建て住宅(いわゆる四号建物)については原則として除外されてしまった。

二 そんな状況の中、私も参加した全国の弁護士の有志40名で5月21日、建設大臣に対して、このような「監理放棄建築士」8名について建築士法に基づく「行政処分の申立」を行った。これまで行政は、このような実情を事実上放任してきたが、今回の申立についてはマスコミの関心も高く、今後は行政もこの問題を無視できなくなるであろう。また欠陥住宅の責任を追及する訴訟でも、違法建築・手抜き工事を黙認した建築士も被告に加える例が増えてきている。

三 弁護士や医師が資格をもった専門家であるように、建築士も国から資格を与えられ、法を守る使命を与えられた建築の専門家である。医師が「手抜き診察」や「違法手術」をしてはならないのと同じように、建築士が建築基準法令や各種の仕様書を守らない建築を黙認したり、助長したりすることは許されないはずである。しかし、現状がそうなっていないのは、現在の建築士の多くは建築会社に雇用されたり、仕事をもらったりして従属的な立場にあり、また住宅を取得しようという市民の側も、監理の重要性の認識とコスト意識が乏しいからである。
 欠陥住宅をなくすためにも、また建築士の社会的信頼を高めていくためにも、建築士の職責や社会的責任について論議をまきおこしていくことが必要ではないだろうか。

弁護士 岩城 穣

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第8号(1998/8/25発行)より転載

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