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消費者問題としての欠陥住宅被害

一 去る3月14日、全国21の弁護士会で一斉に「欠陥住宅110番」の電話相談を行った。全国で約600件、大阪弁護士会でも5台の電話が鳴りつづけ、63件もの相談が殺到した。その内容は深刻であらゆる事項に及び、相談時間も1件20分から30分と長く、相談者にとって大きな悩みになっていることがうかがえた。
 この相談活動をすることになったのは、昨年6月、日弁連の消費者問題対策委員会に「土地・住宅部会」が設置され、欠陥住宅問題に取り組むことになったからである。私はこの部会に8月から参加し、欠陥住宅問題に関わってきた弁護士や建築士、建設省の担当者の方々から話を聞くなどの活動に加わってきた。

二 衣食住の中で、住宅(一戸建て、分譲マンション)はもっとも基本的で、かつ高価な商品である。特に我が国では住宅は数千万円以上もし、購入者は長期のローンを組んで代金を支払う。にもかかわらず、設計・施工・監理(これは「立法・行政・司法の三権分立に例えることができる)の全てを建築業者が独占し、情報も建築業者がほとんど握っており、他方購入者には専門的知識がなく、手抜き工事があってもそれを発見することができないうえ、保証期間はせいぜい2年と短い。行政による通達や指導も、欠陥住宅を予防・救済するという観点からみると極めて不十分である。
 ところがこれまでは、裁判所も弁護士もそのような認識は余りなく、建築の知識に乏しいこともあって、この問題をむしろ敬遠してきたのが実情である。
 しかし、昨年の阪神大震災で、築後まもない住宅やマンションが倒壊したこともあって、欠陥住宅問題は、新たな消費者間起として社会的に注目されつつある。

三 この点、アメリカをはじめ多くの欧米諸国では、インスペクション(住宅の建築に対する検査・監視)の制度がある。
 私たちは、部会の活動の一環として、この3月29日から4月4日までの1週間、アメリカのカリフォルニア州のロサンゼルスとサクラメントに、アメリカの住宅検査制度の視察に行ってきた。
 アメリカでは詳細な設計図面が作られ、行政担当者(ビルディング・オフィシャル) はそれが建築法規に合致しているかを入念にチェックし、合致していれば建築を許可する。そして今度は、施工が設計図書どおりに行われているかを、市の検査士(シティ・インスペクター)が現場に何度も行って検査する。そして一定規模以上又は学校等特別な工事の場合は、建築主に雇われた、有資格の民間の特別検査士(スペシャル・インスベクター)が、市の検査士の監督を受けつつ、現場に常駐して検査・監視を行う。問題があると、再度の検査をパスするまで、次の段階に進めないうえ、罰金の制裁がある。ロサンゼルスには450名ものシティ・インスペクターと、500~600名のスペシャル・インスペクターがいるという。
 ロサンゼルスでは、94年1月17日(これは阪神大震災の1年前の同じ日である!)に発生したノースリッジ地震で大きな被害を受け、その後インスペクション制度をいっそう充実させたという。

四 日本では古くから、町の大工さんが、設計と施工の全部を請け負い、その技術を駆使して家を建ててきたという歴史的な経緯がある。ところが、近時は大規模な住宅会社が下請けを使って工事をさせ、また町の大工の不足や力量の低下といった事情から、先に述べたような種々の問題が出てきているのである。
 このような歴史的な程韓から、アメリカのような制度をそのまま日本に持ち込むことには困難な問題があるが、日本の制度を改善していくうえで、学ぶべきことは多いと思われる。

五 なお、5月1日には、東京で欠陥住宅問題を考えるシンポジウムを企画し、それに向けて、欠陥住宅110番活動の集計や、アメリカの調査報告書のまとめを行う予定である。

弁護士 岩城 穣

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第3号(1996/5/25発行)より転載

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