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被告人の手錠・腰縄姿を法廷で晒すことは許されるのか?

 勾留中の被告人は、刑事法廷への入廷時と退廷時、手錠と腰縄で身体拘束された姿を傍聴人や裁判官らに見られる。初めて裁判を傍聴した一般の方には、手錠や腰縄をされた被告人の姿を見て驚かれた方もいると思われる。
 そのような運用は、被告人の人格権や、無罪推定や当事者主義等の司法原則との観点から妥当とはいえないのではないか。手錠・腰縄大阪国賠弁護団は、そのような問題意識のもと、裁判官や傍聴人から手錠・腰縄姿を見られないようにする措置を裁判所に求めたにもかかわらず、何らの措置もとられなかった結果、傍聴人らに手錠・腰縄姿を晒すことを余儀なくされた被告人の方を原告として、国家賠償を求める訴訟を提起した。そして、大阪地方裁判所(大須賀寛之裁判長)は、2019年5月27日、被告人の手錠等を施された姿をみだりに公衆にさらされないことを法的権利として認める画期的な判決をした(国家賠償請求については、本件裁判官らが執った措置が、法廷警察権の目的、範囲を著しく逸脱し、又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情があるとまで認めることはできないとして棄却している。)。
 判決の一部を以下抜粋する。 「現在の社会一般の受け取り方を基準とした場合、手錠等を施された被告人の姿は、罪人、有罪であるとの印象を与えるおそれがないとはいえないものであって、手錠等を施されること自体、通常人の感覚として極めて不名誉なものと感じることは、十分に理解されるところである。また、上記のような手錠等についての社会一般の受け取り方を基準とした場合、手錠等を施された姿を公衆の前にさらされた者は、自尊心を著しく傷つけられ、耐え難い屈辱感と精神的苦痛を受けることになることも想像に難くない。これらのことに加えて確定判決を経ていない被告人は無罪の推定を受ける地位にあることにもかんがみると、個人の尊厳と人格価値の尊重を宣言し、個人の容貌等に関する人格的利益を保障している憲法13条の趣旨に照らし、 身柄拘束を受けている被告人は、上記のとおりみだりに容ぼうや姿態を撮影されない権利を有しているというにとどまらず、手錠等を施された姿をみだりに公衆にさらされないとの正当な利益ないし期待を有しており、かかる利益ないし期待についても人格的利益として法的な保護に値するものと解することが相当である。」「原告Xに関する刑事事件については、判決宣告期日を含む4回にわたる公判期日のいずれについても、弁護人から手錠等を施された被告人の姿を入退廷に際して裁判官や傍聴人から見られないようにする措置を講じられたい旨の申入書が提出され、各公判期日においても、弁護人から同旨の申立てがされたにもかかわらず、担当裁判官は、いずれの申立てについても、具体的な方法について弁護人と協議をすることもなく、また理由も示さないまま特段の措置をとらない旨の判断をし、手錠等を施された状態のまま原告Xを入廷させ、また手錠等を使用させた後に退廷させたものである。これらのことからすると、本件裁判官らの執った措置は被告人の正当な利益に対する配慮を欠くものであったというほかなく、相当なものではなかったといわざるを得ない。」
 本判決の意義は大きい。
 本判決が報道等される経過の中、申し入れを受けた裁判所が衝立等を立てて被告人の手錠・腰縄姿を晒さないようにする措置をとったとする報告が全国から寄せられるようになった。自分の刑事裁判を受けるにあたって、なぜ傍聴人や司法関係者に手錠・腰縄姿を晒さなければならないのか。現在の運用が抜本的に改善されるよう、本判決を契機にさらなる運動を展開できればと思う。

弁護士 中森俊久

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第46号(2019/8/1発行)より転載

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