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相続関係法の改正に関する中間試案に思う

改正の目玉のひとつ
―妻の相続分の見直し
一般日刊紙が去る6月22日一斉に報道したので、ご承知の方も多いと思われるが、相続法制の見直しが、取沙汰されている。その中でも、重要なのが「配偶者の相続分の引き上げ」である。
これが改正のテーマになったのには、非嫡出子の相続分差別を違憲とした平成25年9月の最高裁判決が関係する。もちろん、非嫡出子と嫡出子の相続分差別が撤廃され、平等になっても、配偶者の相続分は子と共同相続する場合は2分の1のままで変動はないから、変える必要はないではないかとする声も少なくなかった。
一方で、夫婦の居住財産が被相続人(先死配偶者=主として夫)の主たる遺産であった場合、共同相続人(子)が生存配偶者の嫡出子であるときは、遺産分割において、生存配偶者の余生の居住が確保される可能性が高いのに対して、非嫡出子のときはそうした配慮が必ずなされるとは限らず、その結果、婚外子の相続分に相当する代償金を支払う資力がない配偶者において住み慣れた居住家屋から出ていかざるを得ないという事態も想定される。そこで何らかの手当が必要とされた。

相続分増加に関する
改正案の骨子
中間試案では、
①被相続人の財産が婚姻後に一定の割合以上に増加した場合に、その割合に応じて配偶者の具体的相続分を増やすとする甲案
②婚姻成立後一定期間が経過した場合に、その夫婦の合意により(各配偶者の意思表示により)配偶者の相続分を引き上げる(子と配偶者が相続人のとき配偶者の相続分は3分の2)ことを認める乙︱1案
③婚姻成立後一定期間(20年あるいは30年)の経過により、当然に、乙︱1案と同様の割合で配偶者の相続分を引き上げられるとする乙︱2案の3案が考えられている。
皆さんはどう考えられますか。

相続分を増加させることが、本当に必要なのか
家裁裁判官として遺産分割事件を担当していたとき、時に、自分の実母に対して父親の遺産である土地建物に居住し続けるなら、不動産の取得は認めるから相続分に見合う代償金を支払えと主張する子ども(息子に限らず他家に嫁いだ娘)に遭遇したことがある。子どもが非嫡出子や先妻の子どもである場合に限らず、実の子どもからそういう要求がなされて、唖然とさせられたのだが、要するにそのような事態は件の最高裁判決がなされる以前からあったのであり、その意味では特に目新しいことではない。裁判所は、これまで、そのようなケースでは、遺された妻に寄与分を認めたり、妻(母)に同調する相続人との共有取得としたり、まれには「分割禁止」の審判をするなどして、妻が苦境に陥らないような手当をしてきた。ちなみに、お隣の韓国では、配偶者の相続分を血族相続人と共同相続するときは、血族相続人の相続分の5割を加算するよう規律している現行法について、血族相続人がひとりの時は配偶者の相続人が6割となるのに対し、血族相続人が増えるとその分妻の相続分が減って2分の1以下になることを問題視され、せめて2分の1を確保しようとする案などが検討されているものの、2分の1以上にしようとする声はあがってはいない。
いろんな方と出会うたびに、議論をふっかけているが、私自身は、配偶者の相続分を見直す考えのなかに、法律婚を重視せんとする旧来の思想が見え隠れしているように思えて仕方がなく、夫婦関係が多様化している時代のすう勢に逆行しているのではないかという気がしてならない。したがって、いずれの案についても賛成することはできない。

弁護士 森野俊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ40号より転載

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