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最近の最高裁家族法判例をめぐって(ある会話から)

Aさん 男性(50歳) 新聞記者。自ら未婚の母の子であることもあって、担当部署にかかわりなく、家族法に興味と関心を持ち続けている。Bとはある市民集会で知り合い、以後、交友を続けている。

Bさん(68歳) 弁護士。元裁判官。家事実務に長く携わったことから、退官後も家事事件の動向が気になって仕方がない。在職中、ある市民集会で「某判事」として思い切った発言をしたことが機縁となって、取材にきていたAと意気投合し、以後、交友関係にある。

 

A 最近、最高裁は、家事事件で注目すべき判決とか決定を出しているね。その口火となったのは、婚外子相続分差別違憲大法廷判決(平25・9・4)ではないでしょうか。私からすれば、「遅きに失した」感じがするが、Bさんはどう思いますか。

B 最高裁は、平成7年に「民法が法律婚主義を採用している以上、法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが、他方、非嫡出子にも一定の保護を図ったものであると解される」として合憲判決を出しています。その後も合憲判決が続いていましたが、違憲性を強調する少数意見も出ていて、本音をいえば、できるなら国会で法律改正をしてほしかったのではないでしょうか。

A そうかな。それはともかく、子にとっては、父母が婚姻しているかどうかは、全く関与できないことで、自己の責任のない行為について不利益を受けることは、近代法の基本原理に反するのではないか。私など、子どもの時からいろいろ差別をされていたのですが、大人になって父親の財産の相続で差別されると、「差別の追い討ち」をされる感じで、釈然としなかったね。

B 最高裁は、家族形態の多様化やこれに伴う国民の意識の変化、諸外国の立法のすう勢および条約の内容と委員会からの指摘などを違憲の理由にしているのですが、いままで合憲であったものがある時点(2001年7月)で違憲になる理由としては少し弱いように思います。でも、日ごろ遺産分割の調停や審判で悩んでいる現場の裁判官や調停委員などは、歓迎していると思うよ。

A それよりびっくりしたのは、性同一性障害で女性から性別変更をした男性とその妻が、第三者の精子を使った人工授精で誕生した長男(4歳)について嫡出子と認めた決定(平25・12・12)だ。私も少数者として生きてきたので、「嫡出子」の記載を求めた両親の気持ちはわかるけれども、血縁がないことは明らかなのだから、「踏み込みすぎ」という気がしないでもないね。

B 法律家でない人には少しわかりにくいかもしれないが、焦点は、「妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子と推定する。」という民法772条の規定をこの場合でも適用するかどうかなのだ。この点について、判決は、「特例法で婚姻することを認めながら、婚姻の主要な効果である同条による嫡出の推定についての規定の適用を、妻との性的関係により子をもうけることはあり得ないことを理由に認めないのは相当ではない。」としたのだ。落ち着いて読んでみると、筋は通っていて、それほど突飛ではなく、むしろ「法律上の父親を必要とする子供の視点からも大きな利益になる」と評価する学者もいる位だ。

A そうですか。私は「そういうものかな」という感じがぬぐえないのだが、そういえば、この間も、DNA型鑑定で生物学上の父子関係がないことが明らかでも、子の身分の法的安定を保つ必要性があるとして、嫡出推定が及ぶとする判決(最高裁第一小法廷平成26年7月17日)が出ているね。

B さすが、記者だけあってちゃんとフォローしているね。結局は、嫡出推定についての例外をどのような場合に認めるかの問題だ。7月17日の判決でも「生物学上の父と親子関係を確保できる状況にあるときは法律上の親子関係の取消しを認めるべきだ」とする少数意見もあり、人によって考えが分かれると思うよ。いずれにせよ、DNA鑑定のなかったときの規定が社会の実情に沿わないものとなってきていることも否定できず、早晩、立法で解決すべき問題かもしれない。ほかにも、議論したい裁判例もあるが、きょうはこの程度にして、久しぶりに一杯やらないか。

A そうこなくちゃ。実はいい店見つけたんだ。

客員弁護士 森野 俊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第37号(2015/1/1発行)より転載

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