事務所ニュース「いずみ」
HOME > 事務所ニュースいずみ > オアシス > 朝鮮学校の補助金不交付処分に対する行政訴訟

オアシス

朝鮮学校の補助金不交付処分に対する行政訴訟

事案の概要

本件は、学校法人大阪朝鮮学園(以下「学園」という)が大阪府及び大阪市に対して補助金(大阪府は私立外国人学校振興補助金、大阪市は義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金)の申請を行ったところ、いずれもその支出を不交付とする処分がなされたことにつき、その処分の取消し及び補助金を交付する旨の決定を行うことの義務付けを求める行政訴訟である。

朝鮮学校への補助金交付の経緯と突然の不交付処分

(1) 学園は、1974年度から大阪府による助成を受けるようになり、1991年度からは、「私立外国人学校振興補助金」の交付を長年にわたり毎年受けてきた。また、学園は、1988年度から大阪市による「義務教育に準ずる教育を実施する各種学校を設置する学校法人に対する補助金」の交付を長年にわたり毎年受けてきた。そして、2010年度の学園に対する大阪府の補助金は、生徒1人あたり6万9300円(合計8724万円)、同年度の学園に対する大阪市の補助金は、2650万円であった。

(2) 2010年3月、大阪府の当時の橋下徹知事は、学園に対し、①学校法人として、朝鮮総連と一線を画すること、②北朝鮮指導者の肖像画を教室から外すこと、③日本の学習指導要綱に準じた教育活動を行うこと、④学校の財務情報を一般公開することという、いわゆる4要件を唐突に示し、翌年度においては、肖像画を「職員室」からも外すという要件を追加した(5要件)。

ところが、その措置を講じた学園からの2012年3月9日付の補助金申請に対し、大阪府は、「平成24年2月に北朝鮮で行われた迎春公演に、朝鮮学校の生徒が日本から参加しており、これが学校行事としての参加ではないことが証明されない」として、同年3月29日付で不交付の決定を行った。具体的な経緯は、3月16日に一部議員から上記迎春公演の指摘を受けて同年3月19日には不支給を報道発表し、駆け込み的に3月7日に改訂された交付要綱を前年4月1日に遡及して適用するというもので、その恣意性は明らかであった。

(3) 大阪市は、大阪府の2012年3月19日の不支給の報道発表を受けて、その直後に不支給を発表し、3月30日付で不交付の決定を行った。さらには、大阪市は、学園が「大阪府の補助金交付の対象となっていない」ことを不交付の理由とし、3月27日付で要綱を改訂・施行し、それを前年の申請に遡及して適用するなど、その恣意性は明らかであった。

大阪府及び大阪市の  処分の違法性

本件各不交付処分により被る学園の学校運営に対する打撃は顕著であり、十分な人員、教材、施設を確保できない一方、生徒の保護者には授業料の増額の要請を検討せざるをえず、その結果、子どもたちの学習環境を従前と同じレベルで維持することは困難となり、そもそもの学校選択の機会さえ奪う非常な事態に至っている。このことは、憲法26条の教育を受ける権利、子どもの学習権、憲法13条の幸福追求権を抑圧あるいは侵害するうえ、学園のみを狙いうちにし、他の各種学校と学園との間に明確な不平等を生じせしめるものであり、憲法14条の平等原則にも違反する。

さらに、すべての者に対する教育への権利の無差別・平等の保障は、確立した国際人権基準であるにもかかわらず(社会権規約2条2項及び13条、自由権規約26条、子どもの権利条約2条及び28条、人種差別撤廃条約5条(e)の(v)など)、大阪府及び大阪市は、子どもたちの教育への権利を実現するために長年にわたり交付されてきた補助金につき、政治的理由により学園のみを対象として、かつ、それを減額するどころか皆無としたものである。本件各不交付処分は、国際人権基準に照らしても明らかに違法である。

今後の展開

大阪府や大阪市は、「本件補助金制度に基づいて行う補助金の交付決定は、『行政庁の処分』ではなく、一定の補助事業を行うことを条件に補助金の交付を受けたいとの申込みに対する承諾として行われるものであって、その法的性質は私法上の負担付き贈与契約というべきである」として、補助金交付決定の処分性についてそもそも争っている。

また、大阪府は、3月に改訂された交付要綱第2条8号の「特定の政治団体が主催する行事に、学校の教育活動として参加していないこと」の要件を満たすことに確証を得ることができなかったこと、大阪市は、大阪府と同様の扱いとしていることを不交付決定の理由としている。

しかしながら、私立学校に対する助成制度の歴史及び仕組みから、本件各補助金は、教育基本法や私立学校振興助成法等の法令に根拠を有する法令上保護されるべき利益であり、贈与とは大きく性質が異なるものである。自らの属する民族の言葉によってその文化・歴史を守る権利が保障され、多民族・多文化が共生する社会の実現が求められる時代において、政治的及び外交的理由により、子どもたちの権利が侵害されることがあってはならない。本訴訟の中で、①本件各不交付処分が処分性を有すること、②本件各不交付処分が違法であることを明らかにしたい。

弁護士 中森俊久

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第35号(2014/1/1発行)より転載

ページの先頭へ戻る