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憲法再発見

第13回 ついに姿を表した自民党「新憲法草案」

 昨年10月28日、ついに自民党は「新憲法草案」を発表した。前文を含めてほぼ全面的に改定するものであり、「改正」というより、文字通り「新憲法」である。
 すべてに触れる紙幅はないが、ここではどうしても次の3点を指摘しておきたい。

 まず第1に、日本を「戦争のできる国」にすることである。「草案」は、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とした現在の9条2項を削除し、代わりに次のような「9条の2」を設けている。

自民党「草案」

第9条の2
1 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮権者とする自衛軍を保持する。
3 自衛軍は、第一項の規定による任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び緊急事態における公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。 (2項、4項は省略)
第76条
3 軍事に関する裁判を行うため、法律の定めるところにより、下級裁判所として、軍事裁判所を設置する。 (1項、2項は現行と同じ )

 自衛隊については、自国を攻撃から守るのは当然であり、必要ではないかという素朴な意見も多くある。しかし、ここで重要なことは、九条二項がなくなることにより、武力行使を伴う海外派兵も、米軍と共同での戦闘行動も、国連軍への参加も可能になるということである。
 76条3項の軍事裁判所は、戦前の「軍法会議」にあたり、軍規に違反した兵士を処罰・処刑するための裁判所である。

 第2に、憲法のあり方を根本的に変え、「国の権力を制約し、国民の権利・自由を守る」もの(立憲主義)から、「国民の権利を制約し、義務を課す」ものにすることである。

自民党「草案」の前文

(前略)
 日本国民は、帰属する国や社会を愛情と責任感と気概をもって自ら支え守る責務を共有し、自由かつ公正で活力ある社会の発展と国民福祉の充実を図り、教育の振興と文化の創造及び地方自治の発展を重視する。

 このように、新しい前文は、国への「愛情」をもって国を「支える責務」を国民に課しているのである。また12条は、「国民は(中略)常に公益及び公の秩序に反しないように自由を享受し、権利を行使する責務を負う。」としている。

 第3に、憲法改正の国会発議の要件を、現在の「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」から、「過半数の賛成」に引き下げていることである。一度このように緩和がなされると、それ以降は、政権が代わるたびに、いくらでも憲法改正の発議ができることになる。

 現在の日本国憲法は、戦前の旧憲法下で、国民を総動員して侵略戦争を行ったことに対する痛恨の反省から作られたものであり、また戦後の国民の努力により「新しい人権」を次々と生みだしてきた豊かな条項を持っており、世界的にも、改めてその価値が評価されてきている。
 このような憲法の改悪を、絶対に許してはならないし、それは十分に可能である。私たちも、多くの皆さんと力を合わせて、改悪阻止の取り組みに関わっていきたい。

弁護士 佐藤真奈美

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第19号(2006/1/1発行)より転載

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