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憲法再発見

第11回 憲法前文第二段

「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」

 今から12年前の夏、丁度、バルセロナ・オリンピックが開催された年に、この夏オリンピックの開かれるアテネに1カ月半ほど滞在していた。当時大学生だった私は、大学のサークル活動の一環で、O・T・Eという日本で言うところの電電公社で交換社内研修生として、アテネのオフィスに通わせてもらっていた。
 1992年といえば、バブルのはじける直前とはいえ、ちまたでは未だ好景気のさなかだった。ギリシャというヨーロッパの片田舎では、「円」では不便だろうとわざわざ米ドル建てで持参した小遣いは、どんどん目減りをした。当時のジャパンマネーの力か、円の交換は予想外に簡単で、米ドルとの差益は、一カ月余りの間に数万円になっていた。そんな日本の経済力にどことなしか誇りをもっていた私は、オフィスで親しくしてくれたギリシャ人幹部の男性が、「日本人はお金は持っているが、ほんとの人生の愉しみを知らない」ってなことを言われたのには、大変良くしてもらった人だが、少しばかりカチンときた。
 当時の日本の失業率は、確か2%前後で、それに比べてギリシャを初めとするヨーロッパ諸国の数値は、良くて5%、当時の私からすれば、失業率5%など信じられないことであった。
 それから、十数年、日本の経済力もしょせんこの程度なんだよと、12年前の自分に冷静に教えたくなる。経済力を失い、それに併せて、いろいろな大事なものを失いつつある日本。それでも……、日本が今、世界に誇れるものはなんだろうか。ふっと考えた時、頭をかすめたのはやはり、平和の尊さを謳っている憲法前文であり、戦争の放棄を明記した憲法第9条である。
 潔いほどに単純ともいえるこの平和の大切さ、どうすればこの国の「リーダー」と呼ばれる人たちに分かってもらるのだろうか。

弁護士 上出恭子

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第17号(2004/8/1発行)より転載

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