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憲法再発見

第8回 憲法97条 基本的人権の本質

 突然ですが、私が憲法の中で一番好きな条文は第97条です。この条文は、裁判等で使われることも少ないですし、条文解釈が問題になることも少ないので、じっくり読むことはあまりない条文なのではないでしょうか。

第97条(基本的人権の本質)

 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 私は、この文言の中で、特に「過去幾多の試練に堪へ」という部分が大好きです。読むたびに目頭の奥がじんと熱くなります。
 昔は、奴隷ほう起や市民革命など世界史で習うような大事件を「試練」として想像していましたが、最近は身近なところで「試練」を感じます。学生時代、私はサークル活動でたくさんの裁判当事者の方からお話を伺いました。大阪西淀川公害訴訟、過労死事件、東京大気汚染訴訟等、伺ったお話を思い起こすと、日々の生活・訴訟活動等全てがまさに「試練」だと感じます。渡辺洋三先生は、著書で、「かた苦しい専門用語を使った法律や判決の文章は、一見、無味乾燥にみえるけれども、その背後には、生々しい人生の記録がよこたわっている。人々の生きる喜びと悲しみ、怒り、驚き、安堵がうずまいている。その意味で、法とはまた、人生の縮図そのものにほかならない。」(『法とは何か』岩波新書)と書かれていますが、第97条は、全ての人々の人生の縮図と言えるのではないかと思います。
 私の友だちのお母さんは、会社での女性の地位向上に向けてずっと活動して来られた話をした後、「私たちはここまでやったのよ。あとはあなたたちががんばりなさい。」とおっしゃったそうです。憲法第九七条を読むと、諸先輩方への感謝・尊敬の念が沸き上がるとともに、私も将来、胸を張って、自分のことばで、こんな台詞を語れるようになりたい、心から思います。

弁護士 佐藤真奈美

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第14号(2003/1/1発行)より転載

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