事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

出張授業

 大阪弁護士会では、法教育活動の一環として大阪府下の高校に無料で弁護士を派遣して出張授業を行う活動をしています。その関係で私も年に1度、高校に出張授業に行っています。 日程の都合や高校から希望されるテーマとの関係で、毎年出張先の高校も学年も様々です。今年は労働問題をテーマに2年生のクラスに行ってきました。  

 労働問題は高校生にとってもアルバイトなどで身近なテーマです。話の始めに大阪府の最低賃金の金額を尋ねるとすぐさま正解の金額(819円)が返ってきました。ついでに近畿の他府県の最低賃金を伝えると、大阪府の最低賃金額より100円以上低い地域があることに驚きの声。 その後、実際の裁判例を紹介しながら意見交換をしました。紹介したのは、長時間の過重労働や上司からのハラスメントにより若者が自殺をした事件です。高校生とさほど年齢が変わらない若年労働者が入社後数ヶ月で精神疾患に罹患し、自殺にまで追い込まれた事件が有名企業において発生していることに戸惑った様子が感じられました。  

  事案を検討し、どうして被害者が自殺に至ったと思うか尋ねると、「クビになるわけにいかないと思って頑張ったのではないか」、「周りの人に助けを求めることができない環境だったのではないか」、「社長や上司に自分がしていることがハラスメントだという認識が欠けているのではないか」といった意見が寄せられました。  

このような意見は他の高校で授業をしたときも寄せられていましたので、私も成る程と思いながらある程度予想していました。そこで、私が体調を悪化させるような長時間労働に従事させることや、使 用者が業務命令として指示することが度を過ぎたり、ハラスメントを放置するなどした場合は安全配慮義務違反になるので、労基署や弁護士に相談し1人で抱え込まないように、とまとめて授業を終えようとしたときでした。1人の生徒さんが「長時間労働をどうにかせんとどうしようもないんと違うかな」と述べ、その言葉にハッとさせられました。

 働き始めると、長時間労働でも問題のある職場環境でも何とか耐えて働かないと生活できない、正社員の方は再度正社員として雇用される職場があるか分からない、そういった不安の中で働くのが現状です。大阪過労死問題連絡会にも家族の過重労働を心配する相談が多く寄せられますが、働いている本人が会社に目を付けられることを恐れて会社に労働環境の改善を求めることができないのが殆どです。働くことによる健康被害をなくすには、職場環境の改善を職場の努力だけに任せず、法律や社会の監視の下で被害を生む温床自体をなくしていかなければなりません。残念ながら、先の国会では一定の条件を満たした場合に残業代を支払わなくてよいこととする所謂残業代ゼロ法案が話題となるなど、労働環境改悪の動きは増すばかりです。  

  「うちの生徒はみんないい子ばかりだから、大きくなっていいように使われないか心配なんです。」担任の先生が労働問題をテーマに選んだ理由を教えてくれるのを聞きながら、改めて労働者の命と健康を守る取り組みの重要性を感じました。

弁護士 和田 香

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第36号(2014/8/1発行)より転載

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