事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

少年の否認事件

1 少年の刑事事件について

少年の刑事事件では、少年に対して、原則として、刑罰ではなく、保護処分と呼ばれる教育的処分が下される。少年は成人と違ってやり直しがきく(可塑性という)ため刑罰ではなく反省させ再犯しないよう教育をしようというものである。保護処分には、保護観察、少年院送致などがあり、少年院送致が最も厳しい処分と言われる。

2 否認事件の場合

犯罪事実を否認し不処分(成人でいう無罪)を主張していた場合にも、裁判官に認めてもらえなければ、やはり上記保護処分のいずれかが下されることになる。しかも、この場合、裁判官からは、「この少年は自分のしたことを認めず反省していない。」と見られてしまい、最も厳しい少年院送致となる可能性が極めて高い。

しかし、本人は無実を主張しているのだから、反省させ教育するといっても無理がある。結果的に少年院送致となってしまった少年が、どのような思いで日々を過ごしているか、本当に心配になる。

3 A少年の車上荒らし事件

A少年は、4人の共犯少年の1人が運転する車に同乗し、各地で車上荒らしをしたとして逮捕された。私は、国選弁護人としてこの事件を担当することになった。A少年は、犯行を否認していた。共犯少年らと遊んでいて車に乗ったのは確かだが、その後は眠り込んでしまい、車上荒らしのことなど何も知らないというのである。

私は、少年の説明を裁判官に完全に信用させることは難しいと感じた。しかし、A少年は、絶対に自分はやっていないと何度も繰り返す。少年には、もし無実主張に失敗すれば、反省していないと判断され少年院に行く可能性が高いと説明した。それでも少年の気持ちは揺るがない。

もし本当に少年がやっていないのであれば、少年の味方ができるのは弁護人の私だけだ。私は腹をくくり、先輩弁護士とともに弁護士2名体制でこの事件に取り組んだ。事件の終結までには、1年近くかかったように記憶している。

裁判所では、リーダー格の共犯者少年を尋問した。彼は、金色の長髪、見るからに不良少年という風貌で我々を睨み付け、A少年を少年院に道連れにしようと、今にも飛びかかりそうな勢いで我々に怒鳴り散らしていたことを覚えている。

しかし残念ながら、結局、裁判官はA少年の主張を受け入れず、A少年は、他の共犯者少年と同様、少年院送致となった。

4 共犯者少年との再会

それから2年。私は、A少年が、やっていない犯罪について少年院で無理やり反省させられ自暴自棄になっていないか気にかかっていた。そんなある日、意外な形でA少年の話を耳にすることになった。

私の依頼者の紹介で、ある青年が私のところへ法律相談に来た。短くさわやかな髪型で、一見して真面目そうな好青年だったが、どこかで見たことがある顔である。

考え、A少年の審判で私が尋問したリーダー格の少年だと思い当たった。あのとき金髪長髪で弁護人に怒鳴りまくっていた少年は、好青年に変貌を遂げていた。彼も私の顔をみて思い出したらしい。彼は、私の尋問内容まで覚えており、今では、私に色々指摘されたことを感謝していると言ってくれた。

彼は、その後、A少年と仲直りしたとのことで、A少年が出所後まじめに働き、元気に過ごしているとの近況を教えてくれた。A少年にとって、少年院に行ったことはそれなりに良い経験になったようであり、自分の主張を貫いたことを後悔はしていないようだった。

それだけの話である。しかし、彼の話を聞いて、私は、本当に救われた気持ちになったのである。

 

弁護士 瓦井剛司

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第33号(2013/1/1発行)より転載

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