事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

先物取引で逆転勝訴

 今回、大阪高等裁判所は、ガソリンの先物商品取引で損害を蒙ったとして、B株式会社(以下、B)が商品取引業者であるM株式会社(以下、M)を相手方として訴えていた事件で、MはBに対し、一一二七万余円を支払えとの逆転勝訴判決(以下、判決という)を下したので報告する。
 Bの取引期間は半年間であり、この間、Bは追証(追加証拠金)を数次に亘って支払わされ、結局、五一三六万円を出捐し、損害を蒙った。
 有利な事情、不利な事情として、次のような事情があった。
 (ア)Bは個人ではなく、株式会社である、(イ)しかし、Bの代表取締役(以下、代表者)がすべて取引をした、(ウ)Bは大阪市内に3つの、ガソリンスタンドを経営している、(エ)先物取引の商品がBの取り扱っているものと同じガソリンである、(オ)Bの代表者は先物取引をするのは初めてである、(カ)Bの代表者は、老齢でなく働き盛りである、(キ)Bの代表者はMの関連会社のガソリンを取り扱っており、その関連会社のグループに絶大な信頼を置いていたなどの事情がある。
 Bは訴訟のなかで、Mの違法な行為として、次の主張を行い、本件損害賠償請求事件を闘った。
 Mの従業員による本件取引の勧誘、受託行為において、(1)説明義務違反、(2)新規委託者保護義務違反、(3)事実上の一任売買、(4)指導助言義務違反、(5)断定的判断の提供もしくは相場観の押付けの各違法行為があり、債務不履行もしくは不法行為があると主張した。
 判決は、Mには上記(1)ないし(5)の義務があるとしつつ、Mには(3)、(5)の違法はないが、(1)、(2)、(4)に違法があるとした。
 判決は(1)について、Mは先物商品取引のシステムやリスクを十分に説明すべき注意義務があるが、B代表者が「短時間で一〇〇〇万があっという間に消えるような(ことは知らなかった)」、「最悪の場合は現物で取引するようにするから」、「あかんかったら塩漬けにするか」、「こんな恐ろしいの。だったらやめんといかんわ。俺、ぜんぜんそういうの思ってなかったもん」などと、取引の合間に述べていること(取引のやりとりがMにおいてすべてテープにとられ、反訳され証拠として出されている)から、十分に説明義務が果たされていなかったと判断した。
 判決は(2)について、Mは「建玉を制限し、顧客の損失を量的に制限して顧客を保護する」義務があるとして、これを守らず、多額の建玉を建てて、Bに損害を与えたとした。
 判決は(3)についてMは「商品先物取引を勧誘、受託する際、善管注意義務の一内容として適切な指導助言をすべき注意義務があるとして、この指導助言義務違反があるとした。
 そして、BないしBの代表者も、次の理由で過失が八割あるとした。

(1) Bの代表者は日常的にガソリンの現物価格に関する情報を得ていたこと。
(2) Bの代表者は「いらない」と言って、先物商品取引の説明を受ける機会を自ら放棄した。
(3) Bの代表者が取引するにあたって、Mによる先物取引の仕組みやリスクの理解度の調査に「わかった」と答えていること。
(4) Bの代表者が自らの判断で取引に主体的にかかわる意向を示すこともあったこと。

 そして、Bの損害額を五一三六万円とし、その八割を過失相殺し、一〇二七万円をMが負うべき損害とした。弁護士費用は一〇〇万円であった。
 この判決は双方が上告せず確定した。

(弁護団は太平洋法律事務所の三木俊博弁護士と当事務所の中森俊久、私の三名)

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第25号(2009/1/1発行)より転載

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