事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

薬害イレッサ訴訟

一 イレッサとは
 皆さんは、イレッサという薬をご存知でしょうか。イレッサとは、経口薬の錠剤タイプの肺がん治療薬です(一錠の価格は七二一六円)。イギリスに本拠を置くアストラゼネカ株式会社から二〇〇二年一月二五日に承認申請が厚生労働省に出され、同年七月五日に世界に先駆けて承認を受け、僅か半年の審査で、同年八月三〇日に保険適応されました。
 販売当初は、がん細胞だけを攻撃する副作用の少ない画期的な夢の新薬として販売されました。
 ところが、販売後から副作用による死亡が多発し、僅か二ヶ月後には医療機関に向けた緊急安全性情報が出されます。そして、販売開始から二〇〇八年三月末までに亡くなった方は七三四人にまで上っています。こうした薬が今現在でも販売されているのです。

二 イレッサの問題点
 イレッサの問題点は多岐にわたりますが、もっとも重要な点は延命効果の証明がなされていない点です。アストラゼネカ社の本拠があるイギリスを含むEUでは、延命効果が確認できないことから、アストラゼネカ社は承認申請を取り下げています。アメリカでは、一旦は承認されたものの効果がなく害がありそうであるとのことで、新規患者への投与は禁止されているのです。
 その他、副作用について警告表示がなされていなかった等告知が徹底していなかった点、全例調査を承認条件としなかった点、誇大な広告・宣伝がなされた点、研究者と製薬企業との利益相反等、様々な問題点があります。
 確かに、イレッサのおかげで改善したとの報告もあります。しかし、七〇〇人以上の死亡数(これからも増え続ける)というのは抗がん剤の副作用としては異常な数字です。国は直ちに承認を取り消し、アストラゼネカ社も販売を中止すべきであると考えています。

三 訴訟について
 たとえ末期の肺がん患者であっても、命の重みに違いはありません。このような思いから、被害者と被害者の遺族は、イレッサの副作用は薬害であるとして、承認した国と販売元のアストラゼネカ株式会社を相手取って損害賠償請求訴訟を提起しました。現在、大阪地裁と東京地裁で係属中です。

四 最後に
 私は、修習生の時代に、このイレッサ訴訟のことを知り、学習会や弁護団会議に参加し、原告の方にお会いしてお話を聞く機会にも恵まれました。修習生の集会でイレッサをテーマとした分科会を担当したりもしました。そうした縁もあり、弁護士となり、イレッサ訴訟の弁護団に参加しました。
 薬害イレッサ訴訟は、がん患者の生命の重さ、ひいては、全ての人の生命の重さを問う訴訟です。今後とも皆さんの御支援のほどをよろしくお願い致します。

弁護士 長瀬信明

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第24号(2008/7/1発行)より転載

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