事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

無戸籍と戸籍の創設

 いま、新聞紙上でも問題になっている無戸籍の人からの相談を受けた。
 A子さんは、母親と二人で相談に来た。A子は二三歳であるが、無戸籍であり、A子さんが生んだ婚外子B男もまた無戸籍だという。A子の母が結婚していた人以外の人との間にA子を生み、母が夫に気兼ねしてA子の出生届を出さなかったことが、A子が無戸籍となった理由である。
 無戸籍だと学校へ行くときや就職のとき、結婚のときなど、さまざまなときに大いに困るのだそうだ。戸籍というのは、制度上のものであったり、人工的なものであり、必ずしも人の存在にとって不可欠のものとは思わないが、A子には精神的な面でも不安定なものがあるといっていた。
 私は、相談を聞きながら、戸籍などというものは、そもそも、制度的なものであるから、無戸籍であっても、きっと戸籍を創設できる途があると思った。
 では、どうしたらA子やB男の戸籍を創設することができるか。
 手続きを調べながら、A子とB男の戸籍をつくることができた。
 その方法をここに紹介する。
 まず、公的な方法をもってA子がその母の子であること、そして、母の夫の子でないことを証明しなければならない。ところが、昔のことで、母がA子を産んだ病院でA子と母の「母子関係」を証明する医師の診断書や意見書が入手できない。
 私はA子を原告、A子が生まれた当時の母の夫を被告として、家庭裁判所に「親子関係不存在確認の訴え」を起こした。
 裁判所は、A子、母の夫、母の各々のDNA鑑定を命じた。DNA鑑定自身はそれほど難しいものではなく、技師がわが事務所にやってきて、A子と母の口腔内からDNA鑑定用の体液的なものを採って持ち帰り、結果を出す。母の夫は別のところで同様に体液的なものを採ったようである。
 その結果を証拠に、裁判所はA子と母の夫との間には「父子関係が不存在である」との判決を下し、その理由中にA子が母の子であることも認定した。
 ところが、子の判決で就籍手続を行うと、A子の母の婚姻中の戸籍であるA子の母の元夫の戸籍に就籍することになる(法務省民事局昭和三三年一月二五日民二第二七号回答)。しかし、同判決では、A子とA子の母の元夫との血縁関係は否定されており、かつ、A子の母は離婚によりA子の母の元夫の戸籍から除かれているため、筆頭者(A子の母の元夫)と血族でないものが戸籍に就籍するという矛盾が生じる。
 そこで、民法七九一条一項(子の氏の変更の審判)の審判を得て、同判決と合わせて就籍手続をとることにより、直ちに離婚後のA子の母の戸籍に就籍することができる(法務省民事局昭和四六年二月一七日甲第五六七号回答)のである。
 A子は、親子関係不存在の確定判決と、子の氏の変更審判をもとに、A子の母の戸籍(この時点では、母は夫と離婚し、単独の戸籍であった)にA子が母の子であるとして、初めて戸籍に登載された。
 上記のA子の戸籍への登載を踏まえて、独立を理由にA子の新戸籍を作った。そして、A子の子B男について、A子がB男を産んだ病院(医師)のB男の出生に関する診断書を添付してB男をA子の子として戸籍に届出をすることができた。A子やその母は喜んでくれたが、A子や母にお金がなく、ほとんどボランティアとしての仕事ではあった。

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第24号(2008/7/1発行)より転載

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