事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

貧困問題

1 不況からの脱却が遅々として進まない社会状況の下、生活保護受給を必要とする方が増加しており、一昨年からの年越し派遣村に代表されるように、各地で民間団体を中心とする反貧困運動が広がっている。もっとも、現在の貧困問題の背景には、非正規労働者の切り捨ての横行など深刻な労働問題や多重債務問題など様々な問題が絡み合っており、単に生活保護受給のための支援をすれば解決するような問題ではなくなっている。そこには、弁護士でなければ解決できない問題が多く潜んでおり、弁護士が、民間団体の方々と協力して積極的に取り組む必要がある。私も、自由法曹団という弁護士団体の反貧困プロジェクトチーム(PT)に所属し、この問題に取り組んでいる。
2 反貧困PTでは、生活と健康を守る会との懇談や、社会保障推進協議会との懇談を踏まえ、弁護士が取り組むべき課題を討論し活動している。現在、主として取り組んでいるのが、国民健康保険の問題である。公的医療保険の中で最も加入者の所得水準が低いにも拘わらず、最も保険料が高いのが国民健康保険であり、「所得200万円の世帯で年間保険料が50万円」というところもある。高額の保険料は、滞納者を増加させ、保険証の取り上げや市町村による差押えが続出している。このような問題に対処するため、現在、電話相談の実施や訴訟提起等のための準備活動をおこなっているところである。
3 反貧困運動に取り組んでいて一番感じるのが、貧困問題を「自己責任」と捉える自己責任論の横行である。そのため、現在の貧困問題は単なる「自己責任」の問題ではないということをこの紙面でお伝えしたい。
 皆さんは、貧困問題の当事者の苦しい立場を見聞したとき、「どうして努力しないのか。自分であれば努力して打開するのに。」と考えてしまっていないだろうか。このように、苦しい状況下にいるのは自分自身の努力不足によるものだと捉えるのが自己責任論である。
 しかし、そもそも、貧困問題の当事者には、様々な事情から、周囲の理解・支援、貯蓄、健康など、努力できるような環境がなかった方が多く、心の溜め・余裕が全くない。「自分であれば努力して打開するのに」と考えている人とは、置かれている前提状況が全く異なる。さらに、現在の貧困問題は、働きたくても働き口がない、あっても劣悪かつ不安定なものしかないという社会状況下において急増しているものであり、努力しないといった単純な考え方で切り捨てられるものではない。
 「自己責任」論は、「それは当事者自身のせいであるから、私には関係ない。」という観点で他者を切り捨てるだけの意見でもある。今後、自己責任論的な意見にぶつかったとき、それが本当にそうなのかをお考えいただきたく願う次第である。
4 実際の反貧困の現場に目をやれば、社会のニーズに弁護士が十分に対応できているとは言い難いのが現状である。弁護士による救済が必要かつ可能であるのに救済されないまま苦しむ方々がいる現状を打開するため、微力ながら努力していきたいと思う。

弁護士 瓦井剛司

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第29号(2011/1/1発行)より転載

ページの先頭へ戻る