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弁護士活動日誌

過労死企業名公表制度の構築に向けて

1 過労死企業名公表の意義
 過重労働によりある労働者が不幸にも脳・心臓疾患を発症して死亡に至った場合、その企業の他の労働者も同じように過重な労働を強いられている可能性が高いといえますが、このように過重労働を強いられている状態は、例えばアスベストへの曝露と同じように、労働者の生命に対する危険因子であるといえます。
 そして、過労死事件で労災認定を得たり、民事で損害賠償を勝ち取ったとしても、過労死を出した企業の職場環境が一向に改善されていないばかりか、同じ企業の労働者ですら、自分たちの会社で過労死が出たことを知らない場合があるのです。
 労働者から最も尊い生命を奪う働かせ方をした企業は、再発防止策を講じる義務を負っているはずです。
 他方、一人一人の労働者は弱い存在であり、過労死の危険因子である過重労働の改善のためには、その企業の経営者・労働者による労使交渉はもちろん、市民による企業への社会的監視が不可欠といえるでしょう。
 そこで、大阪過労死問題連絡会の有志の弁護士で弁護団を結成し、全国過労死を考える家族の会代表で、自身も夫を過労自殺で亡くされている寺西笑子さんに請求人になっていただき、平成21年3月5日、労災申請事案について労基署が作成していて企業名が記載されている「処理経過簿」のうち企業名の記載につき開示請求を行いました。
2 大阪労働局の不開示決定とその理由
 しかし、大阪労働局長は、上記企業名を開示しないとする決定を下しました。
 大阪労働局は、企業名が開示されると誰が過労死したかが識別され個人のプライバシーを害することを主な理由として挙げています。
3 情報公開請求訴訟の提起
 寺西さんと私たち弁護団は、同年11月18日、国を相手取り前記不開示処分の取消訴訟を提起しました。
 前記の不開示理由について、そもそも、今回の情報開示請求では、労働者の氏名・生年月日などの個人情報の開示を求めているわけではなく、企業名から直ちに過労死した個人が識別されるわけではないと考えるからです。また、過労死企業名を公表するようになれば、企業はもっと労働者の健康・安全に配慮した労働条件・職場環境を構築するように努めるようになるはずです。
4 過労死企業名を全国的に集計して公表する制度の構築に向けて
 厚生労働省によれば、同省は、全国における過労死を生じさせた企業名を把握していないとのことですが、過労死の労災認定が出た企業を全国的に集計・把握しておくことは、過重労働対策の政策・行政指導の運営のためにも重要であるはずです。
 私たちは本訴訟を、国に全国における過労死労災認定が出た企業名を把握・集計させ、これを公表させる制度の構築に向けた運動の契機としたいと考えています。

弁護士 立野嘉英

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第28号(2010/8/1発行)より転載

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