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弁護士活動日誌

高校無償化問題について

1 外国人学校・民族学校の存在
 現在、日本には、さまざまな国籍(188カ国)の外国人が200万人以上暮らしていている。そして、朝鮮学校、中華学校、ブラジル学校、ペルー学校、インド学校、インドネシア学校、インターナショナル・スクールなど、数多くの外国人学校・民族学校があり、外国籍の子どもや、外国にルーツを持つ日本籍の子どもたちが学んでいる。
 しかし、日本政府は外国籍の子どもの学ぶ権利を保障する立場をとっていないため、多くの学校が「未認可校」あるいは「各種学校」として位置づけられ、税制の優遇や公的助成の対象から外されている。2008年のリーマンショック以降、日本で働く日系ブラジル人が真っ先に派遣切りの対象とされ、授業料を払えずブラジル人学校に通えない子どもたちの問題がニュースに取り上げられる等、それら政府の方針による弊害は顕著となっている。
2 高校無償化法の対象
 2009年4月1日、いわゆる高校無償化法が施行され、同年4月30日、文部科学省は、韓国、台湾、ブラジル、フランス、イギリス、ドイツなど各国の在日大使館などを通じて教育内容が確認できたり、国際的な教育認証機関で教育内容が認められたインターナショナルスクールなど計31校を無償化制度の対象にし、就学支援金を給付すると発表した。
 しかし、朝鮮高級学校については、国交がないことを理由に現在留保された状況にある。文部科学省は、専門家からなる諮問委員会を設置したうえで、朝鮮学校の教育が日本の高校に準じる内容かなどを5月下旬から8月まで計5回程度審議したうえで、無償化制度の対象にすべきか結論を出す見通しである。
 この点、当初、朝鮮民主主義人民共和国に対する制裁措置の実施などを理由に、日本国内の朝鮮高級学校をその対象から除外すべきとの意見が政府内からも出されていた。これに対し、政治的及び外交的理由により子どもたちの権利が侵害されることがあってはならないという基本原則に基づいた地方公共団体や各種人権団体からの批判によって、結論が先送りになった経過がある。
 朝鮮高級学校のカリキュラム等の教育課程は既に公表されており、日本国内のほぼすべての大学は、朝鮮高級学校の卒業生に「高等学校を卒業した者と同等以上の学力がある」としてその受験資格を認めていることからしても、朝鮮高級学校が高等学校の課程に類する課程を有することは周知の事実である。いち早く、朝鮮高級学校を無償化の対象にすべきである。
3 多民族・多文化社会の実現に向けて
 2010年6月27日、28日に国連欧州本部の施設で開催された児童の権利条約に関する対日審査においても、朝鮮学校を排除している現状の日本政府の対応に非難の声が上がり、委員会からの勧告にもこの点の指摘が盛り込まれる予定である。
 少子高齢化時代を迎え、それを補うようにして外国人の人口は増加の一途をたどっている。在日朝鮮韓国人らを中心とするオールドカマーに対する差別の問題等を解消できないまま、ニューカマーの労働問題や子の不就学問題等、様々な問題を生じさせている現状は、正しい方向へ進んでいると言えるだろうか。学校に通えない子ども、入管法の厳しい管理によって両親と離ればなれにさせられる子ども、それら子どもたちの困難な状況を直視し、多民族・多文化社会の実現に向けて更なる努力が必要である。

弁護士 中森俊久

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第28号(2010/8/1発行)より転載

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