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弁護士活動日誌

過重業務による精神疾患と「性格責任」

1 06年11月に、「壊れゆく若者の労働現場~過労自殺とワーキングプア」というテーマでシンポジウムを開いた。当日は、子どもさんを過労自殺で亡くされたご遺族からもお話をいただき、子どもさんへの思いや現在の心境など聞かせていただく中で、胸が潰れる思いになった。

2 若い人に限定するものではないが、過重労働により精神的に追いつめられるケースが、非常に増えていると感じる。事務所へ来る相談だけではなく、大学時代の友人と作っているメーリングリストに悲痛なメールが届くといった、日常生活での出来事も含めての印象だ。

 こういったケースで会社側から出される言い分に共通するものとして、「性格責任」があると思う。「自分の仕事が増えた場合に仕事の量も質も上昇させようとする、生真面目で挫折しやすいタイプだったから、追いつめられた」などと言う。しかし、仕事はその人の担当業務(ノルマ)として与えられていて、「達成できなかったらどうなるか……」と、戦々恐々としてこなしているのが現実なのである。

 先に述べたシンポジウムで講演してくださった熊沢誠先生は、「真面目な性格であることを理由に採用しておきながら、『真面目な性格のせい』というのは、全くもっておかしい」という趣旨の発言をしておられた。会社に求められ限界まで働いたのに、「そこまでする必要はなかった」「もっと手を抜いてもよかった」と言われてしまうとしたら、いったい何を指標に仕事をすればいいのだろうか。仕事の場面では真面目さを称揚しておきながら、会社の責任が問われる場面では一変して本人の真面目さのせいにする。それを労働行政が追認する。このような中で、どれだけの人が犠牲になっているか。

 このような現状に吠えている私だが、友人から届く悲痛なメールには「自分を責める必要は、絶対にないと思うよ」などといった通り一遍の返事しか送れず、自分の無力さに遣る方ない思いをするばかりだ。事件活動に全力を尽くすことで、無責任な「性格責任」論の打ち崩しに資することができればと思う。

3 本項のテーマと直接に関わるものではありませんが、06年に読んで印象に残った著作を最後に紹介させていただきます。
 『過労自殺と企業の責任』(旬報社)、『若者が働くとき~「使い捨てられ」も「燃えつき」もせず』(ミネルヴァ書房)、「アパシー」(三田文学)。

弁護士 佐藤真奈美

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第21号(2007/1/1発行)より転載

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