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弁護士活動日誌

「コンプライアンス」なるもの―2つのセクシャル・ハラスメント事件を通じて―

 2005年4月から、大阪府総合労働事務所が主催する法律相談で、月1回程度、セクシュアルハラスメントを中心とする相談員をさせていただいている。  セクハラ事件については、弁護士1年目に横山ノック元大阪府知事のセクハラ事件の弁護団に参加させてもらったくらいで、実のところ即戦力になるのか心もとないところがあったが、勉強をさせてもらいながらということで、引き受けさせてもらった。
 半年あまりの感想として、セクハラについては、高額の慰謝料を認める判決が出されたり、各企業で相談窓口が社内に設けられるなど、社会全体ではその防止の取組みが随分と進められているという漠然とした印象を持っていたが、実際に相談を聞くと、まだまだひどい職場環境というのが実在するのだということを実感する。

 たとえば、相談だけで終わったケースだが、転職をしてしばらくしたころに上司の男性から「おまえは、不倫をしたことがこれまでに沢山あるはずだ」等ということをいきなり2人きりの時に言われ、暗に男女関係を強要され、それを断ると、様々な嫌がらせをされるようになったというようなケースがあった。特に、実際に法律相談にこられる方というのは、いわゆる中小規模の会社にお勤めの方が多く、そういった事業所では、労働者の数も少なく、被害の声を上げることそのものが非常に難しいという実情がある。

 そんな中、新入社員として入社したAさんが入社直後に被害に受けたというケースを労働事務所の法律相談を受けた後に担当することになった。事案の性質上、被害の内容を具体的に説明はできないが、強制猥褻に当たりうるひどい被害で、被害直後からAさんは抑うつ状態となり、出社することが出来なくなった。会社と加害者宛に内容証明郵便を送り相手方弁護士と交渉した結果、200万円の解決金および解決に至るまでの給与相当額を支払うということでつい先日解決した。示談の内容の一環として、社内に「コンプライアンス委員会」を立ち上げ、セクハラ被害を社内で解決する取り組みをするといった誓約も設けた。

 Aさんの被害を見たときに、この解決が十分なものであったといえるか自信はないが、早期に一つの解決が図れたということは、Aさんの再出発にはプラスだったろうと思う。会社が早期に示談での解決に応じた背景には、様々な要因があるであろうが、このところ、再三取り上げられ、「流行っている」とも揶揄したくなる「コンプライアンス(法令遵守)」、「CSR(企業の社会責任)」なるものが後押ししてくれたことを感じる。

 このAさんのケースを担当するようになってしばらく後に事務所の法律相談で佐藤弁護士と一緒に受けたケースも、現在、会社の弁護士と交渉中であるが、先方が真っ先に口にしたことの一つがこれまた「コンプライアンス」であった。 本当にこのコンプライアンスなるものが各会社に真の意味で浸透した日には、セクハラだけでなく、過労死・過労自殺等のもっとも悲惨な労働者の被害がなくなるのだろうと思うが、その日を見ることができるのか、「コンプライアンス」なるものの成長を見守りたいと思う。

弁護士 上出恭子

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第19号(2006/1/1発行)より転載

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