事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

ある日突然被告に

 当時学生だったA子さんが、指導担当の教官からセクシャルハラスメントの被害を受けたという申告を学校に行い、学校側が、セクシャルハラスメントに関する内部規定に沿った独自の調査をした結果、その教官に対し、訓告処分を行った。  その処分が根拠がなく不当だということで、慰謝料等合計2200万円を請求する裁判が今年10月提訴された。
 A子さんが、セクシャルハラスメントの被害を学校に申告し、既に、学校を出て半年近くが経過していた。
 そして、この裁判は、上記処分を行った学校だけでなく、被害を申告したA子さんに対しても、学校と連帯して前記2200万円を支払えという請求がなされているものであった。
 当然のことではあるが、一学生にすぎないA子さんが、前記訓告処分の決定に直接的な関与をしたわけではない。被害の申告及び、その後の学校側の事情聴取に応じただけであり、処分の結果は、随分と後になって、学校からの通知で知ったにすぎなかった。
 このような経過の中で、学校を出て、新しい生活を始めたA子さんの元に、ある日突然届いた「被告ら(学校とA子さん)は、原告に対し連帯して金 2200万円を支払え……」と書かれた「訴状」、それを手にしたA子さんの、驚愕、不安、怒りは、筆舌に尽くしがたい。
 また、この提訴について、一部の報道では「セクハラ処分『事実無根』」といった原告側の一方的な言い分のみが報道されたり、インターネット上の掲示板では、心ない、いや、セクハラ被害者への悪意がありありと感じられる極めて無責任な発言が続いている。
 このような提訴自体、セクシャルハラスメントの二次被害ともいえ、今後のセクシャルハラスメントの被害申告そのものに歯止めをかける等、他の同種事案への影響が非常に懸念されるが、それに加えて、前記のような報道、特に、インターネット上の表現による、被害申告者の精神的な苦痛は甚大なものである。
 さらに、これまでの裁判例に照らせば、処分をした学校側に加えて、被害申告者本人を被告とする裁判は、異例とも感じられるものであり、提訴の仕方そのものについて、率直に言って、どれだけ一私人が被告とされた時の、訴訟を受けなければならない経済的負担、高額の賠償金を支払わなければならないという精神的な不安や、負担、日常生活への支障等について、真摯な検討がなされたのか、疑問を抱かざるを得ない。
 原告は、A子さん被害申告の外形的な事実は認めていることからも、A子さんの被害申告が違法だとする原告の言い分そのものが不当であり、A子さんの代理人として、この裁判の早期解決に力を尽くす事はいうまでもないが、このような提訴の仕方について、他山の石として、今後の自己の訴訟案件の取り組みの中で、同じようなことを自己がすることのないよう、十分に留意しなければと感じている。

弁護士 上出恭子

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第14号(2003/1/1発行)より転載

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