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弁護士活動日誌

再度の執行猶予を再び獲得

 Aさんは、平成17年12月、名古屋高等裁判所で、第一審の懲役10月の実刑判決を退けた懲役1年、執行猶予4年という逆転判決の宣告を受けた。Aさんは、右の第一審判決の前に、窃盗で懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けており、いわゆる執行猶予中に再び前の罪と同種の建造物侵入と窃盗未遂の罪(窃盗は前の罪と同種)を犯し、起訴されたのである。

 周知のように、執行猶予中に、また罪を犯し起訴されると、情状の面から見て実刑判決を受ける可能性が高く、実刑判決を受けると、前の執行猶予が必然的に取り消され、取り消された判決の懲役刑と、新しく宣告された実刑判決の懲役刑とを併せて刑期を務めなければならない。Aさんの場合だと、1年6月と10 月の合計2年4月の懲役を務めなければならないのである。

 Aさんと私の出合いは、Aさんがインターネットで私がこの事務所ニュース「いずみ」の12号に書いた「再度の執行猶予」というタイトルの記事を読んで来所してくれたことに始まる。
 第一審判決後、保釈で出て来たAさんは、パソコンで調べて私を訪ねて来たのである。

 私は、Aさんから事案の内容や、第一審での弁護の在り方や何としても立ち直り、社会復帰を遂げたいとの気持ちを訊いて、高裁で逆転して、再度の執行猶予を獲得するのは初めての経験だが、やってみましょうと弁護を引き受けたのである。
 私は、Aさんが犯してしまった罪は、今更どうしようもないので、それを素直に認めて、そのうえでAさんが心から反省し、立ち直りたいというAさんの気持ちを、どう具体的に形で示し、裁判官に訴えるかをAさんととことん議論した。
 Aさんは、(1)まだやっていなかった被害者(建造物侵入は高等学校)に手紙を出し、弁護人と一緒に行って謝罪すること(犯罪は三重県四日市市内で、大阪から遠かった)、(2)さらに、被害者の女学生たち(犯罪は窃盗未遂)にどうするか、女学生たちに謝罪のためとは言え、会うのはかえって不安がられるのをどうするか。(3)、(1)、(2)について、被害弁償をしたいが、果たして受けとってもらえるか、受けとってもらえないときは第一審のときもした贖罪を重ねて行って、Aさんの気持ちを示そう、(4)、(1)の校長先生が会ってくれたら、お礼の手紙を出そう。(5)Aさんの家族、とりわけ年老いた両親にがんばってもらい、情状証人になってもらおうと考え、Aさんと一緒に行動し、右の(1)ないし(5)をすべてやり尽くした。
 とりわけて感動的だったのは、校長先生がAさんを憎まず、心から立ち直ることを願い励ましてくれたことであった。
 私は、裁判のなかでAさんの反省の上に立った右の行為を丁寧に被告人質問の形で立証していった。
 裁判所は、Aさんの真摯な態度を酌みあげてくれ、冒頭で述べたような判決を下したのである。
 Aさんは生き生きと仕事をしながら、感謝の日々を過ごしてくれている。

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第20号(2006/8/8発行)より転載

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