事務所ニュース「いずみ」
HOME > 事務所ニュースいずみ > 弁護士活動日誌 > 再度の執行猶予もどき事件

弁護士活動日誌

再度の執行猶予もどき事件

 以前、このニュースの第12号で、「再度の執行猶予」と題して、執行猶予期間中に再度罪を犯して起訴された事件について、再度の執行猶予の判決を得たことを報告したが、今回、同じように再度の執行猶予に似た執行猶予の判決を得たので珍しい事案としてここに報告したい。
 Aさんは平成14年12月5日、ある罪で懲役2年、執行猶予3年の判決を受けた。この判決は検察官もAさんも控訴せずに平成14年12月19日に確定した。
 ところが、Aさんは残念ながら平成14年12月17日、ある商品を万引きして逮捕され、窃盗罪で再び起訴されたのである。
 私は弁護を依頼され、早速、刑事記録(検察官が証拠として裁判所に提出を予定している証拠で検察官が開示したもの)を取り寄せて、読んでみた。
 記録を見てみると、今回、起訴された窃盗のほか起訴こそされていないが、他に5件の万引きがあり、Aさんも供述調書のなかでそれらをすべて認めている。しかも、5件とも先に述べた執行猶予付きの判決の下された事件の裁判中の万引きである。
 情状面では、かなり厳しいものがある。
 それでも私は接見のなかでAさんと検討し、何とか再度の執行猶予付きの判決を目指そうという方針を確認した。
 起訴事実はすべて認め、Aさんを世話し、釈放後はAさんを雇い入れてもよいという方に情状証人として証言してもらい、被告人質問では、私は弁護人でありながらAさんを叱った。そしてまた、更生に向けてがんばるように励ました。
 その意味では、私の弁護は、ごく普通の弁護活動であった。
 検察官の論告求刑は「前の判決の確定前であるにも拘わらず」としつつ、懲役1年6月という厳しい求刑である。
 再度の執行猶予であれば、懲役1年以下でなければならない。
 判決当日、裁判官は「被告人を懲役1年2月に処する」と宣告する。
 この瞬間、私はだめだと目をつぶった。
 ところが、裁判官は引き続いて「但し、この判決が確定した日から4年間その刑の執行を猶予し、その猶予の期間中、被告人を保護観察に付する」と宣告したのである。私はやれやれと思った。
 これは、再度の執行猶予をつけるか否かの事案ではなく、前判決の確定前の犯罪であるから、前の判決で認定された犯罪と今回の犯罪とが併合罪(これは長くなるので説明を省く)で、裁判官は前判決が執行猶予付きの判決であることや、今回の犯罪は被害額が少なかったこと、本人が反省し更生を誓っていることなどを勘案して、前述のような判決となったものである。  タイトルを「再度の執行猶予もどき事件」とした所以である。

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第15号(2003/7/20発行)より転載

ページの先頭へ戻る