事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

少年事件で試験観察

 少年事件の弁護で重要なことは、罪を犯した少年の可遡性を信じて、どう立ち直る機会を与えてやるかである。
 ある日の法廷で「少年を試験観察とする」と裁判官が審判(判決)を下した(試験観察とは、最終処分を保留にし、少年を釈放して少年の生活を観察するというものである。しかし、試験観察は実務ではなかなか下されないのが現状である)。
 少年はこれまで連続して3度の保護観察付きの保護処分を受け、右の審判のときも保護観察中であった。この保護観察中というのは、大人の場合だと懲役刑に執行猶予が付き、その執行猶予期間中に再度罪を犯し、起訴されたのと同じ状況であり、少年はまさにあとがない立場であった。
 少年は今回、窃盗で少年鑑別所に収容された。同種の前歴があり、しかも保護観察中(いわば執行猶予中)である。
 少年は反省している。私と面会するなかで、心から反省し涙を流して立ち直りたいと言っている。
 両親も少年の姉も少年の立ち直りを援助し、励ましていきたいと願っている。
 私は何とかしたい、何とかしてやりたいと思った。しかし、少年の前歴や保護観察中ということを考えると少年院に入って矯正をはからなければならない可能性が圧倒的に高い(少年院は罪の応報として入るのではなく、少年の教育や矯正のための施設である)。
 私は面会のなかで少年に、いまの自分の気持ちを心を込めて私宛に手紙を書いてほしい、そしてそれを裁判官に読んでもらおうと提案した。少年は下口唇を噛みしめながら無口で、しかし大きく頷いた。
 すぐに少年から私に宛てた手紙が届いた。
 私は一読して感動し、手応えを感じた。
 決して字はうまくないが、少年の心の中を窺わせるに十分な文面になっている。
 私は少年が心を込めて書いた手紙を直ちに裁判官に届けた。
 審判の日がやって来た。
 裁判官が、手紙の中身を確認しながら少年に質問をする。
 少年は泣いた。
 傍聴していた両親も泣いた。
 こんななかで冒頭に述べたように試験観察の審判となったのである。

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第13号(2002/6/1発行)より転載

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