事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

日照権侵害と仮処分

 高層建物と日照権の侵害などの問題についてはこのニュースで過去2回にわたって取り上げた。
 昨年9月にも大きな成果をあげた日照権侵害をめぐる事件があったのでここに紹介したい。

一、平成10年7月、大阪市生野区桃谷2丁目の住民の代表から近所に6階建のワンルームマンションが建築され、すでに基礎工事が着手されているが建築予定地は狭く、近隣建物とは近接しており、近くには高層建物はない土地柄である、何とか右のマンションを二階建ないしは3階建にしてもらうようにできないかとの相談があった。
 私と岩城弁護士は早速取り組むことになった。

二、私たちは直ちにマンションの施主と請負人である工務店に内容証明郵便で次のことを通告した。
 (1)私たち代理人弁護士を窓口として十分な事前協議を尽くすこと
(2)マンションの詳細な建築図面、日影図面などを開示すること
(3)協議が調うまでの間、建築工事を停止すること
この通告に対し、施主の代理人として工務店の代表者から我々弁護士に対し電話で事前協議に応じること、日影図面をすぐにファックスすること、協議が調うまでの間、工事を中断することを明言してきたので我々弁護士はこれらを了承した。

三、我々弁護士と住民らは施主や工務店の代表と3回にわたって、協議を重ねたが協議は調わず、施主・工務店側は協議が調うまでの間は、工事を中断するとの約束を反故にする旨を宣言して工事を再開した。

四、そこで、住民らは平成10年8月3日、日照権を侵害される人を中心として大阪地方裁判所にマンションの建築差止の仮処分申請をした。
 裁判所は3回の審尋(しんじん)を経て平成10年9月4日、日照権の阻害が最もひどい住民1人について、住民側の勝訴(施主・工務店はマンションの建築工事を続行してはならない)の決定を下した。
 その間、施主と工務店は裁判官が裁判の審理がすむまで建築工事を待ってもらえないかと要請したのを無視してマンションの建築を続行したが、右の仮処分の決定が出て建築工事を直ちに中断しなければならなかった。
 決定の理由は工務店の代表者が自ら及び施主の代理人として協議が調うまでは建築工事を中断すると約束したことを理由とするものであった。

五、私たちは右の仮処分決定を大きな武器として、施主や工務店と交渉した。
 その結果、六階建のマンションの建築を認める代わりに施主や工務店の側に目隠しの設置や防犯のための施設や駐輪場の整備など多項目に亘る条件を約束させ、少くない解決金を支払わせる内容で解決した。
 たたかうことが自分たちの権利を守り、擁護する途であることを示す典型的な事例であった。

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第9号(1999/3/23発行)より転載

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