事務所ニュース「いずみ」

弁護士活動日誌

担当事件 二題

 

その1、法人格否認について

 Aさんは中国の美術品を輸入し販売する商売をしています。
 Aさんは得意先のB株式会社にも中国の美術品や古美術を卸し販売してきました。
 AさんはB株式会社と取引をしていましたがその社長C個人を信用し、実際はC個人と取引をしているようなつもりでした。なぜならば、B株式会社は正式な株式会社として法人格をもっていたのですが社員は社長のCのほか、Cの奥さんが仕事を手伝うぐらいの小さな会社であり、その会社の株主もCが殆どの株式を保有しCの個人的な信用で営業活動をしていたからです。
 そんななかで、Cの経営の失敗でB株式会社が事実上倒産してしまいました。
 そこでAさんはC個人に対してB株式会社の買掛金債務を支払うよう裁判を提起したのです。本来ならば借金の主体はB株式会社ですが、右に述べたように B株式会社とC個人とが一体となっているような場合はB株式会社の法人格を否認してB株式会社に対する売掛金をC個人に請求できる場合もあるのです(これを法人格否認の法理といいます)。この理論は最高裁判所も判決で認めているところです。
 AさんはC個人に対し裁判をしてがんばっています。

 

その2、特別縁故者について

 Yさんはこれまで身のまわりのことを見てあげていたXさんが死亡し、少しばかりの遺産がありXさんには相続人がいないので何とか私に遺産をもらえるようにしてもらえないだろうかと相談に来ました。
 人が死亡すると相続が開始しますが、相続人が一人もいないときはその遺産は国のものになってしまいます。
 しかし、亡くなった方(被相続人)と一緒「生活してきたとか、被相続人の療養看護に努めたとか、その他被相続人と特別の縁故があったという事情がありますとその人からの請求によって「特別縁故者への分与」として相続財産の全部または一部をもらうことができます。家庭裁判所は被相続人と特別縁故のあった者との関係をよく見て相続財産の全部を与えるか、一部を与えるか、あるいは全く与えないかについて審判を下すことになります。この特別縁故者への分与は相続であり、税金としては贈与税ではなくより低い相続税が課せられることになります。Yさんの場合は被相続人の相続財産の一部を分与する旨の審判が下されました。
 しかし、Yさんにとって最もよいのはXさん持遺言状を作成してもらっておくことです。そうすれば、家庭裁判所に審判を求める手続きもいりませんし、全部の相続財産を譲り受けることになります。また、この場合は、他に相続人がいませんのでご遺留分をめぐりて争うこともないのです。遺言状を作っておいてもらうことをおすすめする所以です。

弁護士 蒲田豊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ創刊号(1995/8/10発行)より転載

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