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弁護士活動日誌

「教壇」に立ってみて

 今年4月から、ある短大(幼稚園や小学校の先生になる人が多い)で「日本国憲法」の講義を担当することになった。「表現の自由」などの一つのテーマについて、約40人と90人の2つのクラスで1回に1時間半ずつ講義を行うというものである。超多忙な中で、毎週講義をする自信がなかったので、2人の友人の弁護士との3人のローテーションで担当させてもらうことにした。
 まず、準備が大変である。難しい憲法の話をするわけではないが、自分なりにそのテーマについて憲法のおさらいをし、次に具体的な事例を中心に、基本的人権の大切さと、人権同士がぶつかりあう時の調整のあり方を考えてもらえるよう、講義の構想を立てる。自分が担当した事件の記録を読み返したり、有名な事件についてインターネットで調べたりしながら、レジュメや資料を作る。一時間半の授業のために、5、6時間の準備の時間がかかってしまう。
 これだけの準備をして授業に臨んでいるのに、生徒たちの私語が多いのは予想以上であった。
 ある時、あまりに頭に来たので、「今、人権の調整の話をしているが、あなたたちがしゃべることによって授業が散漫になるのは、まじめに聞きたいという他の生徒たちの人権を侵害している。また、一生懸命準備をしてきた私の人権も侵害している。しゃべる人が自分の権利を放 棄するのは自由だから、そんなにしゃべりたいなら教室の外で話しなさい」と怒ってやった。それで静かになるのはしばらくの間だけだが、やはり、きちんと叱ることは大切だと思った。
 そんな中で、3時間立ったまましゃべり続けるのは、法廷での尋問以上に(?)疲れる。終わるとグッタリしているのが自分でわかる。
 とはいえ、具体的な事例の話をすると、みんなシーンとなって聞いてくれる。いつも一番前で熱心に聞いてくれている生徒もいる。感想文に「憲法の大切さがよくわかった。ニュースなどで問題になっていることがだんだんわかってきた」などと書いてくれていると、本当に嬉しい。6月27日の「労働基本権」の講義のとき、住友生命ミセス差別事件の話をして、「今日の午後、大阪地裁で判決があるので今から行ってきます」と話したところ、次の感想文で「住友生命の事件、勝ってよかったですね。テレビも新聞も、興味を持って見ました」と書いている生徒が何人もいた。
 最後の授業でお別れのあいさつをしたら、みんなで拍手をしてくれた。また、試験の代わりに3人が出題したテーマについてレポートを提出してもらったが、みんな一生懸命考えて書いてくれていた。
 前期が終わるころになって、ようやく生徒たちの「顔が見える」ようになってきた感じである。
 後期は10月から、また別のクラスの生徒たちを教えることになる。次は、もっとゆとりをもって、生徒たちの未来に役立つ講義ができればと思っている。

弁護士 岩城 穣

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第12号(2001/9/1発行)より転載

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