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寄稿

憲法とミュージカルと猫の昼寝

 猫の昼寝。ふと目を覚まして、起き上がり、体の向きを変えて、また寝て。少ししてまた起き上がり、何が気に入らないのか、寝床を踏みふみしてる。その時の猫の妙に真剣な顔が好きです。そしてまた寝る。猫も夢をみるらしいですが、猫も空想をしたりするのでしょうか。ありがたいことに空想(妄想?)を形にできる人間に生まれて、それを他人に演じさせ、歌わせ、それを観客にみせる(しかも有料で)。そんな傍若無人な者を「劇作家」といいます。中森弁護士らが中心となって製作されている「大阪憲法ミュージカル」に関わって、「無音のレクイエム」と「憲法のレシピ」の2作品を書かせて頂きました。「憲法のレシピ」のアンケートに「若夫婦のラブストーリーはいらない」という意見がありました。戦後、戦場で負傷して戻って来た夫と、待ち続けていた妻の話で、それは必要ないということです。実はこのご意見は私が考える憲法ミュージカルにとって、とても大切なものなのです。観客が「憲法ミュージカル」の「憲法」と「ミュージカル」、どちらに重きをおいて来場するのかで意見は分かれます。「憲法を学ぼう」「主催者の憲法改正に対する意見を聞こう」と思って来場される方には、ご指摘の通りにラブストーリーは必要ありません。それどころか「あの話が入っていない」「この意見を言ってない」と物足りなく感じられるでしょう。そんなことは百も承知のことで、「あの話」や「この意見」をすでに知っている方には観て頂く必要がないのです。「憲法ミュージカル」は、少なくとも私が関わった2作品は「初心者向け」、もっと言えば「憲法に何の関心もない方向け」です。理想は「ミュージカルを観に行ったら、帰りの電車の中で憲法のことを少し考えた」です。考えた結果、どんな意見を持とうがそれは個人の自由だと思います。講演会・勉強会・集会等の中には、残念ながら情報を発信する側が聞かせる努力をしていないものが多くあります。だから聞く側に聞くための予備知識と、聞くぞという強い思いがないと睡魔に勝てないし、そもそも足を運ばない。聞かせる努力は単に面白おかしくすればいい、有名人を出せばいいというものではありません。硬い所と柔らかい所、そのバランスに一番気を使います。それが歌の雰囲気やその配置、若夫婦の物語などの色恋、新喜劇的なお笑いのノリなわけです。「大阪憲法ミュージカル」は市民参加、市民が出演するのが前提です。その表現方法がミュージカルでないといけないのかと考えました。例えば「憲法劇」としてみましょう。これではハードルが高すぎるでしょう。「憲法落語」は聞くものであって、自分が演じるイメージが わかない。「憲法コント」講演会の休憩開けにやってそう、しかもすべってそう。「憲法歌舞伎」「憲法能」「憲法レビュー」「憲法狂言」…どれもしっくりこない。演じたい人、踊りたい人、歌いたい人など、やはり受け皿が大きいのは「ミュージカル」なのでしょう。 憲法改正が現実味を帯びていくなか、今後、ミュージカルを通じて何を伝えていくのか、難しいところです。

劇作家 小鉢 誠治

劇作家 小鉢 誠治氏のご紹介

 小鉢誠治さんは、ミュージカル、ストリートプレイ、朗読劇など様々なジャンルの作品を手がける劇作家です。2010年にOSK日本歌劇団に書き下ろした「歌劇バンディット!~霧隠才蔵外伝~」では、大阪文化祭賞でグランプリを受賞され、また、雑誌「上方芸能」誌上では、「関西で活躍する劇作家たち」の一人に選ばれています。私が事務局を務める大阪憲法ミュージカルにおいて、2016、2017年に上演した「無音のレクイエム」、2018年に上演した「憲法のレシピ」は、いずれも小鉢さんの作品です。「無音のレクイエム」で戦時中の状況を伝え、「憲法のレシピ」で戦後憲法が制定された過程を描く、即ち両作品は連続したものとなっています。複眼的な思考から描かれる台本には、私たち素人には気付くことすら難しい、多くの「タネ」が隠されており、雑談の中で小鉢さんからお聞きするその「タネ明かし」はとても興味深いです。様々な情報へのアンテナが鋭い小鉢さんの益々のご活躍を期待しております。

弁護士 中森 俊久

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第45号(2019/1/1発行)より転載

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