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寄稿

外国ルーツの子ら、生かされる社会を Minamiこども教室でめざすこと

 「金さん、生徒会の役員に立候補してん。今から立会演説会の作文書くねん。」中学生になったメグミがMinamiこども教室にやってくるなり、私にこう話しかけてきた。「一度見てあげるから書いたら見せにおいで」と返答すると、彼女は机に向かい、黙々と作文作業に取りかかった。小一時間して「できたで」とメグミ。聞かせてごらんと促すと、はきはきとした声で読み上げた。作文にはどうして生徒会に立候補するのか、学校をよくするために何に取り組むのか、彼女の思いが綴られていて、意欲的で、力強い言葉で埋め尽くされていた。
 Minamiこども教室は、毎週火曜日に大阪市中央区島之内の公共施設で開催している夜間教室だ。ここは親の都合により外国から渡日してきた子どもたちなどを対象に、日本語や教科の補充学習に取り組んでいる。2013年9月に仲間たちと一緒に発足した子どもたちの安心安全な「居場所」だ。特にここに集まってくる子どもたちは一人親家庭やステップファミリーが多い。不安的な生活を支えるためより割高な賃金を求め、多くの親が夜間に就労している。夜遅くまで子どもだけで過ごす家庭が多い。
 メグミは開設直後から教室に通うようになったタイ出身の子。幼少の頃に来日していて日本語会話に問題はなく、むしろタイ語を忘れがちだ。生徒会選挙への挑戦を決意したメグミに、教室の終わりの会で、みんなにも演説会の作文を聞いてもらったらどうかと勧めた。すると「ええ」と恥ずかしそうにした。でも「どうせたくさんの人の前で読まんとあかんやんか、練習になるで」と一押しすると、「うん」とうなづいた。
 勉強時間終了後の会。通級する他の子どもたちや、彼らに関わる多くのボランティアの前に立ち、はっきりとした張りのある声で演説文を読み上げた。若干練習したせいかさらに歯切れよく声もよく通った。もちろん、彼女に対する応援の意味も込めて拍手は鳴り響いた。
 Minamiこども教室の風景。友だちとのいざこざで泣き出す子、自分の担当のボランティアさんが他の子に奪われたとすねてしまう子、勉強が嫌で机の下に隠れてしまう子。このありのままの姿に私たち大人はたじたじになるが、柔らかな心でこの子らと向き合うぞ、と言い聞かせて「居場所」を守っている。大都会の中の小さな外国人家庭の自立を支える活動は、外国ルーツの子どもたちの可能性を生かすこと、誰もが人の輪にいる安心を感じることをめざす。
 教室には通常、30名の子どもたちが通う。毎年新しい仲間が加わる。まだ日本語会話が難しい中国出身の子が片言の日本語で「医者」になりたいと語ってくれた。フィリピン出身の子はサッカー選手になりたいと教えてくれた。ちなみにメグミは、「助産師になってタイと日本で働きたい」と夢を語った。外国ルーツの子どもたちは国際化社会を引っ張る存在。彼らが生かされる社会は誰もが大事にされる社会。Minamiこども教室のプラットホームを生かして、そこを目指して取り組んでいる。

金 光敏(コリアNGOセンター事務局長/教育コーディネーター)

金 光敏(コリアNGOセンター事務局長/教育コーディネーター)氏のご紹介

 大阪市生野区生まれの在日コリアン3世の金光敏さんは、特定非営利活動法人コリアNGOセンター事務局長をはじめ、大阪市立大学等での非常勤講師や各種行政の諮問委員を務めながら、教育コーディネータとして外国にルーツを持つ子どもたちの学習支援に長年携わってきました。私が所属する外国人の子どもの人権部会(大阪弁護士会)でも大変お世話になっており、本年6月には滋賀のブラジル学校2校の訪問に同行して下さいました。2009年7月から毎日新聞大阪版「トブロサルダ~大阪コリアンの目~」を連載し(現在も連載中)、昨年には、アメリカ国務省の招聘プログラムに参加されています。気さくなお人柄で、かつ、とても分かりやすい話をして下さる金光敏さんの益々のご活躍を期待しています。

弁護士 中森俊久

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第42号(2017/8/1)より転載

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