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寄稿

2020年までに死刑廃止を

 日弁連は、今年の人権擁護大会で「2020年までに死刑廃止を目指す」ことを宣言しました。1989年に国連が死刑廃止条約を採択してから既に四半世紀、遅すぎるとの見方もあるでしょうが、私は2020年という目標を設定したことに日弁連の本気を感じました。
 アムネスティ・インターナショナルは、死刑を残虐で非人道的な刑罰だと考えています。現在、死刑を法律上または事実上廃止している国は、141カ国、ちょうど世界の7割にのぼります。死刑廃止が世界の潮流となっていることは間違いありません。
 刑罰の歴史をみると身体刑という刑罰が行われていた時代があります。手足の切断やむち打ちなど身体を傷つける刑罰です。今でもごくわずかな国で残っていますがほとんどの国では行われていません。近代国家では許されない非人道的な刑罰だと認識されているからでしょう。しかし、考えてみて下さい。手足を切断するのは残虐だが、首を切断するのは残虐ではないのでしょうか。切断ではなくて絞首だからいいのですか。死刑が非人道的な刑罰として急速に世界から姿を消していることは当然だと思います。
 よく近代国家では被害者遺族の復讐は許されない、だから代わりに国家が死刑を行うという意見を聞きます。しかし個人の復讐がだめなら国家がその代行をすることもだめなのではないでしょうか。刑罰とはそのようなものとは違うと思います。また、日本で起きる殺人事件のうち加害者が死刑になることは1%に足りません。死刑がもし復讐の代行であるなら既に国家はその務めを果たしていません。
 更に忘れてはならないのが誤判の可能性です。取り返しがつかないのは懲役刑も同じだという人がいます。先日、自然発火による火災が放火殺人と間違われた事件が再審で無罪となりました。無期懲役刑で獄中に21年囚われていました。本当に取り返しがつきません。しかし、これがもし判決が死刑で既に刑が執行されていたらどうでしょうか。それでも死刑も懲役刑も同じでしょうか? 同じと言う人の神経が私には理解できません。
 今回、日弁連が2020年を死刑廃止の目標としたのは、その年に国連犯罪防止刑事司法会議が日本で開かれることが理由ですが、同時に東京オリンピックの年でもあります。死刑は、人間の尊厳を謳った五輪憲章の精神にも反しています。ぜひこの年までに死刑を廃止してこれこそをオリンピックのレガシー(遺産)にしてほしいと思います。

アムネスティ・インターナショナル会員 田森 洋樹

アムネスティ・インターナショナル会員 田森 洋樹氏のご紹介

 「今だから話そう」というわけではありませんが、裁判官をしていたころから、関西で設立された「陪審制度を復活する会」に参加して、活動していました。司法制度改革の結果、裁判員制度が採用されたのですが、同会は、刑事裁判への市民参加のあるべき姿はなお「陪審制」であるとして、現在も活動中です。ところで同会が主催した陪審セミナーやそのあとの懇親会などで、時に市民の方々から現職裁判官であった私に対し厳しい批判がなされるのですが、そうした時に決まって弁護人の役をとって下さったのが、ほかならぬ田森さんでした。親しくなってから、田森さんがそれ以前からアムネスティの会員として死刑廃止を中心に活動され、また本文にもあるように大阪のある冤罪事件の支援運動にも係わっておられることを知りました。柔らかな物腰のなかに秘められている闘志にいつも驚いています。実年齢は私より少し下ですが、兄貴分のような存在です。

弁護士 森野俊彦

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第41号(2017/1/1発行)より転載

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