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寄稿

「一億総活躍社会」について

 連日の報道で、その名称を知らない人はいないのではという「一億総活躍社会」。担当大臣までいるので、政府としてのやる気はマンマンであることはよく伝わってきます。すべからく、活躍したい人が活躍できる社会は良い社会だと思いますが、上から目線で「活躍しろ」と言われると、非常に気分が悪いものです。その気分の悪さを、言語化したいと思います。

 さる11月26日、政府は一億総活躍社会への具体策を検討する「一億総活躍国民会議」を首相官邸で開き、緊急対策を決定しました。「希望出生率1.8」、「介護離職ゼロ」などの達成に向け、保育と介護の受け皿を各50万人分に増やすことが対策の柱となりました。

 しかしその一方で、「子育てを家族で支え合える三世代同居・近居がしやすい環境づくり」なる項目も対策には盛り込まれ、三世代同居に向けた住宅建設や、UR賃貸住宅を活用した親子の近居などを支援するといいます。

 この「三世代同居支援」は、以前から安倍政権が掲げている政策のひとつです。親に子どもをみてもらう環境をつくり、働く女性が子どもを産みやすくするための施策だというのですが、「育児の人手不足は家庭内で解決しろ」という目論見が垣間見えませんか?

 また、さらにその先には「子どもをみてもらったんだから、親の介護も自宅でやれ」というい思惑も見え隠れしませんか?

 子育てや介護を社会全体の問題として捉えず、家庭内の問題にする、何かというとすぐに「家族の絆」などという精神論を持ちだすのです。

 そうそう、私は「絆」という言葉が嫌いです。なぜなら、語源は家畜を繋いでおくくびきという意味だからです。つまり、犠牲を伴う関係性であるということを、最初から含んでいる言葉なのです。

 話を戻すと、三世代同居には利点もあるかもしれません。が、父母と娘が実の親子であるのならばまだ言い合いもできますが、日本では依然として夫の両親との同居がメインです。つまり、自分だけ家の中で他人という状況下の「嫁」が、家庭内だけでなく社会でも「輝く女性」になれと言われているようなものです。日本の子育て中の父、つまり夫が「子どもの世話」にかける時間は、平日でわずか7分、日曜日で18分です。ただでさえ子育てと仕事の両立に疲弊しきっている日本の働く母は、「嫁姑バトル」や「介護」まで加わると、いったい何人分活躍すれば良いのでしょうか?

 まあしかし、問題は男性の皆さま方の意識改革という点に尽きるかもしれません。大きな解決策はただ一つ、男性の皆さんが主体的に「子育て」も「介護」も「家事」も担うことです。だって、「一億総活躍」は妻も働くことが前提なのですから。「僕は妻を手伝ってるよ」なんていうのは、主体的でも何でもありませんからね。お気をつけあそばせ。

大阪国際大学 准教授 谷口真由美

大阪国際大学 准教授 谷口真由美氏のご紹介

谷口真由美さんの紹介

谷口真由美さんは、大阪国際大学の准教授で、人権の国際的保障、女性の権利、ジェンダー法等を研究分野とされています。また、全日本おばちゃん党の代表代行として「日本国憲法 大阪おばちゃん語訳」を出版し、憲法の価値を広く伝える活動等にも積極的に従事されています。大阪弁護士会選択議定書批准推進協議会主催の国際人権連続講座にも多大なご協力を頂いており、一見難しい話を分かりやすく紐解くお話は、多くの市民の方が国際人権に関わる契機となっています。最近、テレビのコメンテーター等としてお見かけする機会も増え、御存知の方も多いと思いますが、とても気さくで、かつ、人権感覚に溢れた谷口さんのお話を聞く機会は貴重です。先日も、十三のお店「風まかせ 人まかせ」で私と上出弁護士がご一緒させて頂きました。この場をお借りして、店主の寛子さんにお礼申し上げます。

弁護士 中森 俊久

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第39号(2016/1/1発行)より転載

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