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寄稿

過労死ラインで働く若者たちの現場を変えたい

「娘が朝の8時30分から24時まで働いており、家に帰っても持ち帰り残業をしている。睡眠も毎日4時間しか取れていない」という相談の電話に先日対応しました。労働時間を計算してみると、国の定める過労死ラインを大きく上回っています。また、最近娘が痩せてきており、精神的にも危なそうだとのことです。私は、すぐに一度お会いして、休職や労災申請も含めた相談をしようと伝えました。

 

連日のように私の所属するNPO法人POSSEには長時間労働の相談がかかってきます。そうした相談を受け、時に弁護士の方を紹介し、時に労働組合を紹介し、また本人を伴走型で支援することが私たちの日々の業務です。最近大きな問題となっている「ブラック企業」からの相談も年々増加しています。

 

こうした長時間労働をされている方は、最初から会社と法的な交渉をしようという人ばかりではありません。むしろ「もう少し頑張ってみます」と言って過酷な働き方を続けられ、結局体を壊したりうつ病になってしまう方が多いのが現状です。私は、そういった方からの相談の際には、必ず国が定めている過労死の認定基準(過労死ライン)を引き合いに出し、現在がいかに危険な状態かを説明し、労働時間を減らしたり休職するための手立てを一緒に考えましょうと説得します。そうした客観的な指標や労災の制度の説明をすることで不安が和らぎ、自分の状況を改善してみようと決意される方がいます。

 

ところで、この過労死ラインの基準は、多くの過労死で家族を亡くされたご遺族や、支援を行う弁護士の方々の長年にわたる労災申請や審査請求、そして裁判の結果切り開かれてきたものだと聞いております。私たちが現在「ブラック企業」という大きな社会問題に対して、当事者の方からの相談を受け、あきらめずに法的に交渉しましょうとアドバイスできるのも、ひとえにこうした方々による粘り強い取り組みの成果があるおかげだと日々思い知らされています。

そうした中、2010年に京都支部を設けたPOSSEが、関西圏で過労死・過労自殺問題に取り組んできた弁護士の先生方の取り組みをじかに目にする機会に恵まれたのは、相談活動を行うものとしてとても幸運なことでした。特に岩城先生をはじめ、上出先生、中森先生、瓦井先生、和田先生には講演会での講師や、労災事件に関する法律相談、そして現在大きなうねりになろうとしている過労死防止基本法の制定を求める運動等、ほんとうに様々な場でお世話になりました。また、現在では過労死問題などでささやかながらご一緒に仕事をさせていただける機会も得ることができております。

私たちはこれからも、過労死やブラック企業をなくしていくための社会規範の形成を行っていきます。今後も働き方を改善する取り組みの輪を大きく広げていきましょう!

NPO法人 POSSE 川久保 尭弘

NPO法人 POSSE 川久保 尭弘氏のご紹介

NPO法人POSSEは、若者の労働問題を解決することを目的として2006年に設立され、東京・仙台・京都を中心に活動しています。代表の今野晴貴さんの著作『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書・2012年)は大きな反響を呼び、「ブラック企業」は社会用語になりました(今年の流行語大賞に選ばれるかもしれません)。季刊誌『POSSE』の水準は高く、理論と実践が結合するとこんなにいきいきとした取り組みができるのかと、改めて思います。
我が事務所は、特に京都POSSEの皆さんと親しくさせていただいてきました。大阪過労死問題連絡会、大阪過労死家族の会、過労死防止基本法制定大阪実行委員会、働き方ネット大阪(現・NPO働き方ASUーNET)などの企画にも積極的に参加し、参加者を元気にしてくれます。
POSSEの皆さんは、①賢くて、②まじめで、③素直で、④行動力があり、こんな若者たちがいる間は、日本の未来は捨てたものじゃないな、と思わせてくれる人たちです。川久保さんは、POSSE京都支部の代表をされています。あまり能弁とはいえませんが、いつでもどこでも携帯電話にかかってくる若者からの相談に、誠実に粘り強く対応されている姿に感心します。
川久保さんをはじめ、POSSEの皆さんとこれからも、いろんな活動を一緒にやっていけることを願っています。

弁護士 岩城 穣

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第34号(2013/8/1発行)より転載

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