寄稿
「あべの総合」と私
1「障害配慮勤務求め提訴へ バス運転手、分社化で対応変化」。今年8月22日、朝日新聞の夕刊にそんな見出しの記事が載りました。堂々の社会面トップです。
記事の主人公は、身体に障害があるバスの運転手さんです。長年、障害に配慮した特別な勤務シフトの下で働くことを認められてきましたが、勤務先のバス会社は最近になって「これ以上の勤務配慮の継続は認められない」と伝えてきました。運転手さんにとって、一方的に配慮を打ち切られることは、仕事を続けられなくなることを意味します。
2 この運転手さんの代理人として、会社と交渉していたのが、「あべの総合」の岩城穣弁護士です。岩城弁護士と私は、同弁護士が事務局長をつとめておられる「大阪過労死問題連絡会」を通じて知り合いました。以来、ここには書ききれないぐらい数多くの取材でお世話になっており、私にとっては仕事のうえでの父のような存在です(世代的にも・・?)。このバス運転手さんの案件でも取材に協力していただきました。
3 岩城弁護士のお話を聞き、この問題の背景には、今の時代ならではの要素が多くかかわっていることがわかりました。
まず、バス会社がここに来て態度を変えた原因です。バス会社はもともと親企業の一部門でしたが、赤字が続いていたため、経営合理化に伴う分社化で独立採算制となりました。このため、必要最小限の人員で勤務を回さざるを得なくなり、障害がある人だけを特別扱いはできなくなった・・・と会社側はいいます。「経営合理化」や「分社化」というのは流行りのキーワードですが、その陰では「働く権利」をめぐる様々な問題が起きているのです。
4 そしてもう一つ、国連の「障害者権利条約」と我が国との関係です。「職場において合理的配慮が障害者に提供されることを確保すること」などがうたわれ、締約国はそれを実現するための措置をとる義務を負います。日本政府は2007年にこの条約に署名しましたが、必要な国内法整備が済んでおらず、まだ批准には至っていません(仏、独、伊、加、英、豪、中などは批准済み)。条約が早期に批准されていれば、会社側の対応もまた違ったものになった可能性があります。
5 一人のバス運転手さんが投げかけた疑問が、今の社会構造をあぶり出し、障害者問題に取り組む国際社会における日本の位置付けまで浮き彫りにしてしまったわけです。そこに、この訴訟の大きな意義があると思います。
6 このように、岩城弁護士に限らず、「あべの総合」の弁護士さんたちが手がける案件は、このように、単に「“個人”対“企業”」「“個人”対“国”」の枠に収まらない、社会的な問題提起を含むものが多いのです。それゆえ、取材する私たちとしても気が抜けません。センスを磨いていないと、その重要性を見過ごしてしまうかも知れないからです。
7 そんなこんなで、これからも私は「あべの総合」の弁護士さんたちのお力を借りながら、仕事をしてゆく所存です。どうぞよろしくお願いします。
朝日新聞大阪社会部記者 阪本輝昭
朝日新聞大阪社会部記者 阪本輝昭氏のご紹介
●阪本輝昭さんのご紹介●
阪本さんは朝日新聞の社会部記者で、4年くらい前から大阪過労死問題連絡会の例会に通われるようになって知り合い、そのつながりで、これまで過労死事件に限らず、様々な事件について記事を書いていただきました。
阪本さんの寄稿文にある事件のほか、昨年7月3日付朝刊には、「預け金500万 返還1万円 ゴルフ場破綻 後継会社が通知 会員権所有者、提訴へ」という記事も社会面トップで書いていただきました。
阪本さんは、ちょっとオタクっぽい風体の方ですが、ハートはこよなく熱く、私が少し事案を話しただけですぐに問題の所在をつかみ、行動を開始する、頼もしい社会派記者です。
私のことを「仕事のうえでの父のような存在」とおっしゃっていただけるのは、大変光栄なことです(もっとも、「世代的にも・・」というのは、若干異論が‥(^_^;))。
また、当事務所の弁護士が手がける案件は「社会的な問題提起を含むものが多い」とおっしゃっていただけるのも、そういう観点を大切にしたいと心がけている当事務所にとって嬉しいことです。
今後も、当事務所と親しくお付き合いいただけることを願っています。
弁護士 岩城 穣
あべの総合法律事務所ニュース いずみより転載


