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寄稿

こんな時代は落語がよろしおまっせ~

 老後にどれだけお金が必要か? これは我々の生活を大きく左右する問題だ。でも、どんなに莫大な資金を手にしたところで、それだけで人生の質が決まるわけではない。(と、信じたい。)
 昨年末に毎日放送を定年退職した私は、考えた。大切なのは、どんな顔をして老後を過ごすか、だと。出来ることなら笑って日々を送りたい。どうせいつかは皺くちゃの婆さんになるのだ、それなら思い切り笑い皺だらけの顔になってやろうじゃないか。
 そうは言っても、個人のくだらない煩悩は尽きない、いや、それ以上に日々のニュースに目を向ければ、この国は一体どないなってんねん? 民主主義とか立憲主義とか法治国家とかって言葉は、もう死んだのか~!と怒りに満ちる。鏡の中に見る、我が形相の恐ろしきこと。こら、いかん!
 そこで、落語である。いろいろあるが、まず笑うことにする。私は落語のお稽古を始めた。先頃、繁盛亭大賞に輝いた桂かい枝さんを師匠と仰ぎ、「愉かい亭びわこ」と名付けてもらったのだ。
 落語がすごいのは、まずお金がかからない。テレビで時代劇をやろうとすれば、時代考証にセットに衣装に…ああ、多額の製作費を想像させる企画書を手に、社内で格闘する姿が浮かんでくる。それが落語では一言「拙者は」と呟くだけで、時代劇になってしまうから可笑しい。英語なら「I」と表現するだけの「自分」を指す言葉が「わたい」「わて」「わし」「わらわ」「わちき」等々いくらでもある。一言で人物の立場や時代を描写できるのだ。
 その上、座布団一枚あればどこへだって行ける。私は今、局アナ時代に取材でお世話になった方々をキャンピングカーで訪ねる旅をしている。東北の大津波ですべてを奪われた方がようやく得た、終の棲家。そこで地元の食材を色々ご馳走して頂いた。お返しするものが何もない私は、落語を聴いてもらうことにした。ご近所さん数人もお招きして、食卓が高座に早変わり。私の拙い落語を終えたとき、一人の女性が漏らした言葉が忘れられない。「ああ、久しぶりに笑った。」
 これまでラジオの報道番組を中心に取材したり、語ったりしてきた私は、社会の歪みと闘う人たちに数多く出会ってきた。どんなに声を上げても、連帯しても、大きな変化をもたらすのは難しい。それでもしぶとく活動を続ける人たちに共通するのは「~にもかかわらず笑う」ことだと気づいた。笑う力は、怒りを昇華させて新たな活動へと奮い立たせてくれるように思う。
 笑って、つながって、つづける。私の老後は、これでいく。

水野 晶子さん(ラジオパーソナリティ)

水野 晶子さん(ラジオパーソナリティ)氏のご紹介

 大阪弁護士会のラジオ番組「弁護士の放課後 ほな行こかー」(MBSラジオ・毎週月曜日午後6時30分から)に、4~5年前、出させていただいた折、今から7年前から同番組のラジオパーソナリティをなさっている水野さんと初めてお目にかかりました。ほんの数時間のやりとりだけでしたのに、直感で「馬が合う!」とびびっときました。「そのうち、呑みにいきましょうね」っとお伝えしながら実現出来ずにいたところ、先日、知人弁護士の結婚披露宴で司会をなさっている水野さんと再会を果たしました。
 ラジオ出演の折には、簡単な打ち合わせをしただけで、水野さんからの自然な質問にスルスルと答えるうちに番組になっていたという、とても新鮮かつ驚きの体験をしました。
 これからは落語だけでなく「朗読ライブ」「ドキュメンタリー朗読」(ご自身でインタビュー取材をしてその方の物語を朗読台本にまとめて朗読される)といった新たなことに挑戦されるようです。
 朗読ライブは、大阪弁護士会館近くの「雲州堂」にて定期的に行われるようですので、興味のおありの方は、「雲州堂茶論」で検索の上、イベント日程をご確認下さい。

弁護士 上出恭子

あべの総合法律事務所ニュース いずみ第46号(2019/8/1)より転載

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